第10話 雨
冬の始まりの様で秋の終わりの様な気温。
そんなどっち付かずの日に限って、突然の雨が降った。
通り雨ではなく、本格的な雨。
家を出る時は降っていなかったので、途中で本降りになった。
登校中の雨ほど、嫌なものはない。
傘が無いから余計に嫌だった。
この気温で濡れるのは嫌だなぁーっと考えながら、濡れてしまった事は仕方ないのか、と歩を進める。
こういう風な事をしていると絶対に風邪を引くのは分かっているが、家に帰っても遅刻をするので、とりあえず遅刻はしたくないという使命を背負う。
通学路には僕と同じ考えをする人が多く、走ってる生徒が大半だった。
その中で、立ち止まっている生徒が居た。
前田さんだった。
前田さん、イジメはまだ続いている。
ボンクラの担任は気付いていない。
そしてボンクラ以下の僕が何も出来ない。
彼女の横を通り過ぎる事しか出来ない。
僕はバカだったので、前田さんを横目ではなく、しっかり見ようと歩を緩めて彼女の横を通り過ぎた。
そして走った。
バカだった。
雨でカモフラージュされるだろうと思ったが、彼女と目が合ってしまった。
見つめ合ってしまった。
僕は気付いた。
雨が彼女を濡らしていた。
本当に雨だったら良かったのにと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます