第9話 黒板
本格化したのは、黒板の書かれた文字によるものだ。
イジメなど誰が拍車を掛けるものではない。
勝手に自ら拍車が掛かり、止まれなくなり、止められなくなる。
人間は流れに弱い。
流される事に慣れていると言った方が納得してしまう。
僕もその1人だった。
中学生という生き物は何故か、馴れ馴れしい仲間意識を持つ事がある。
小学生の時は
「◯◯くん」
「◯◯ちゃん」
もしくはあだ名だったりした。
中学生は何故か苗字を呼び捨てにしたり、下の名前を気安く呼んだりする。
仲間感が高まった様な、背伸びした様な、そんな恥ずかしい事が日常で起こっている。
僕のクラスでも同様に漏れなく起こった。
誰もが男女問わず、下の名前で呼ぶ。
女子の下の名前を呼ぶ事はかなり躊躇されるが、自然と浸透してしまった。
担任の先生は自分の教育が成功したんだと感涙までしているからおめでたい。
でも、あの日、黒板に書かれた文字を担任が見れば、自殺をするかもしれない。
黒板にはこう書かれていた。
「前田の下の名前を呼ぶの禁止」
と。
朝のホームルームが来る前に消されたが、みんなの頭の中には彫刻で削った様に記憶されている。
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