僕と天音が付き合うまで その10 (天音復活計画その2)


 本日も学校から帰宅して、天音に付き合う……でも全く進展はなし……


「ご飯を一緒に食べてくれるようになっただけ、ましなのかも知れないけど……」


「…………」


「だーーかーーらーー、ずっと下を向いてたら、特訓にならないじゃないか」


「でも…………」

相変わらず俯いたままで、こちらを見ようともしない、そして会話もあまり出来ない……これじゃ一緒にいる意味が全くない……やはり最低でも僕を見て話しをしてもらわないと……


「ううう、分かったよ~~また着ればいいんだろ、ハア~~~」


 僕は仕方なく、天音の制服を着る……ちなみの女性っぽい服装でもダメだった……

 制服はもう、いらないからと押し付けられ、部屋に置いてある……義母さんにバレたら何て言われるか……



「ほら、着たぞ!」


「朋ちゃん!」


「誰がともちゃんだ!」

 途端に天音が僕を見る……いったい何なんだよ~~


「だって……前の学校……、正確には前の前の学校では、友達結構いたし、学校は楽しかったし……その制服を着た女の子ってだけで凄く嬉しくなっちゃうんだもん」


「女の子じゃないけどな!」


「その格好で、その顔でそんな事を言われても誰も信じないよ~~超可愛い~~」


「やめてくれれええ」

 僕にとって可愛いは悪口なんだよ~~


「だってえ、可愛いんだもん」


「でもさー女の子の可愛いって信用出来ないじゃん?、僕のクラスに可愛い女の子紹介してあげるってよく言ってくる子がいるんだけどさー、大抵自分よりも可愛くない子を連れてくるんだけどさー」


「え?朋ちゃん、友達いるの?しかも女の子の?」


「おい!」


「てへ」

舌を出してテヘペロをしてるらしいが、眼鏡で片眼を瞑ってるかよくわからん……


「てへじゃないよ……まあ、だから天音の可愛いも一緒だろ?」



「うーーん、それはその子が朋ちゃんに気があるんじゃないのかな~~?」


「は?ナイナイ」

 中学からの腐れ縁、その名の通り、ゆかりが僕の事をなんて思ったこともない……そもそもあいつ彼氏いるとか言ってなかったか?


「でも、友達に可愛い子がいたら、気のない相手とかだと逆に自慢したくなるもんだよ?私こんな可愛い子と友達なんだ~~っ感じで」


「そうなの?」


「うん、ブランドのバックとか持ってたらみんなに見せたいじゃない?そんな感じで」


「うわ~~なんか怖い」


「そう?」


「顔で相手を見定めてるって感じがする」


「うーーん、でも気が合わないと、そもそも誘っても来てくれないし、友達にもならないし」


「そうなんだ……まそうかもな」


「だから、朋ちゃんもみんなに見せたいな~」


「やめてください、死んでしまいます、そもそも朋ちゃんをやめろ」


「朋ちゃん髪の毛銀色にしたら、前に来た美智瑠さんに似てるよ、それなら一緒にお買い物とか出来るよ~~同じ僕っ子だし」


「あのね、僕は天音の友達になる為に、こんな格好をしてるわけじゃだけど?」


「でも、私こんなに直接話すなんて、中学の友達とでも、なかなかないよ、大進展だよ~~」


「いやだって、最終的には好きな男とデートするんだろ?そいつにこの格好させるのか?」


「やめてください!、私の好きな人を悪く言うのは、そんな変態みたいな格好するわけないでしょ!」



「うわーー、それ言う?言っちゃう?」


「だってえ~~」


「ちょっと油断するとすぐに毒を吐くんだから……そんな調子だと、天音の好きな奴もすぐに愛想尽かすかもな~~」



「そ、そんな事言わないもん」


「どうだかな~~、そいつだって男だろ?、天音男だと見境なく毒吐くだろ~そしたら怒るだろ絶対に」


「彼はお兄さんと違って優しい大学生だから、そんな事で怒りませ~~ん」


「大学生かよ…………、どうせチャラチャラしてて、彼女もいて、天音からかわれてるんだろ?」


「ち……違う……違うもん!!、彼はそんな人じゃない!!、あなたと一緒にしないで!!!、私……信じてる、信じてるもん!!!」


 天音は泣き出す、眼鏡からポタポタと頬を伝って涙が流れる……

え、ええええ、泣く?あ、まあ……泣くか……僕だってリンをバカにされたら……


「ご、ごめんよ、ごめん……ちょっと言い過ぎた……謝るよ」

 僕は素直に頭を下げた、バカにしたわけじゃない、ただ、少しだけ、ほんの少しだけ、僕は嫉妬していたから……、別に天音に恋をしたとかではない、嬉しそうに好きな人の事を話す、話せる事に……だって僕は……僕の好きな人の事を全く知らないから……


 僕は顔をあげると眼鏡を外して涙をハンカチで拭き、丁度眼鏡をかける瞬間だった……そして


あれ?今一瞬だけ見えた天音の顔……どこかで……いやそれより、天音って……実は凄く綺麗?


下を向きながら、かけていたので、よく見えなかったが、長い睫毛に綺麗な顔立ちだった……


「ううん、私も悪かったの、つい調子に乗っちゃった、お兄さんごめんなさい」


「……いや……、いいよ……」


「?」


 僕はつい、ぼーーっと天音の顔を見てしまっていた……


「お兄さん?、朋ちゃん?」


「だから、朋ちゃんはやめろって、そろそろお腹すいてきたね、何か作るよ」


「うん!今日は何かな~~?」


 お粥を出してからすっかり天音の餌付けには成功していた、今は僕のご飯を毎日食べてくれる、でもそれは結構嬉かった。


「今日はチャーハンだよ、チャーハンは結構カロリーあるからね~」


「チャーハン?」


「そう、先によくフライパンを熱して、ご飯を卵に混ぜてから炒めると米と卵が絡んでパラパラ黄金チャーハンになるんだよ、今作るから」


「見てもい?」


「いいよ~~」


 僕は天音とキッチンに入り、エプロンをつけ料理を開始……


「きゃああああ、制服エプロン可愛いいいいいいい」


「ハイハイ……もう好きにして」


 僕はまな板と包丁を手にすると、リズム良くネギとチャーシューをみじん切りにし、家にあった蟹缶の水気を切る

 

フライパンをよく熱し、ラードを入れさらに煙が出るくらい熱する、その間に帰って来たときに冷ましておいたご飯に卵を入れかき混ぜておく、少しネギを入れ焦がした後にさっきの卵ご飯を入れ炒め、チャーシュー、蟹、残ったネギを入れ更に炒める。


 フライパンの中でグジグジ炒めずに、大きく振るのがコツ、ご飯を炎にさらすように空中に舞うように炒める、こうすることで水気が飛び、パラパラになり更に香ばしさも増す


 パラパラになってきたら、塩とコショウを振り、中華スープの元を少し入れ、さらに混ぜるように炒め、最後に醤油を少しフライパンの縁にたらしてかき混ぜる、これで香りと色を付ける、完成~~


「はい、蟹チャーハンの出来上がり~~~」

 皿によそい、横に立っていた天音に渡す。


「美味しそう~~~朋ちゃん!早く食べよう!!」


「だ~~か~~~ら~~~朋ちゃんじゃ…………まあいいか」


 嬉しそうに皿を運んで行く天音を見ていたら、なんだか少し楽しくなってきた自分がいた。


「妹もいいかもね、でも……このままじゃ兄妹じゃなく姉妹になっちゃう……」


 自分の履いているスカートを見て、なんとも言えない気持ちになっていた……




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