僕と天音が付き合うまで その8 (その兄って奴最低じゃん)


「朋ちゃんのごはん美味しくてついつい一杯食べちゃう」


「えーー、もっと食べてよ」


「でも太ったら朋ちゃんに嫌われちゃう……かも」

 天音は私の手をギュッと握った……私はその手をさらに強く握りかえした。

 

「たとえ天音が百キロになったって嫌わない……」


「……百キロはさすがに……」

 そう言ってクスクスと笑う天音……私たちはまた、ほんのちょっと前の昔話を続けた。



 ####



 「洗い物くらいはやります……」

 天音はそう言うと台所で洗い物を始める、僕はポットでインスタントコーヒーを入れ部屋に戻った。


 お湯を沸かしてちゃんと入れたかったんだけど、天音の横に並ぶのはまだ無理そうなんで……


 部屋に戻ると早速PCを起動させる。


「ヤバいなーリン待ってるだろうな~」


 今日はいつもよりだいぶ遅いログイン、リンが待ちくたびれてるんじゃないかと焦る。


 いつもの画面、いつも通りまず見るところは友達の欄…………


「あれ?いない……」

 待ちくたびれて落ちちゃったのか……少し不安を覚える…


 暫くいつもの場所でリンをまちつつ、ボーっと画面を見ていた、考えていることは妹の事……


 痩せた身体、尖った言葉なのに物凄く弱気な性格、僕と1年の間殆んど口も聞かずに暮らしてきた……


 そんな彼女が一念発起で変わろうとしている……好きな人が出来た、だから何としてでも変わりたい、プライドも何もかもかなぐり捨て僕に頭を下げた。


「凄いなあいつ……」

 第一印象から最悪、今日初めてちゃんと話したけど、もっと最悪な印象を受けた、正直めんどくさい奴、関わりたくないとさえ思った。


 「でも、僕とあいつは兄妹、そして、同じ志しを持っているし」

 好きな人の為に頑張る、好きな人の為に変わろうとする。


 男嫌い、当然僕の事も大嫌いなんだろう……それでも僕に頭を下げる、そんな妹を本当に凄いと思った、協力したいと思った……


「僕はあいつを全力でサポートする……」

 そう思った、そしてそれは僕にとってこれから辛い事を言わなければいけない……


 そう考えていると、友達欄にリンがインしたと表示


『ルナーーこんーーー、ごめんね、今行くから落ちないで待っててえええ』


『リン、こんーーーー大丈夫だよ~~待ってるよ~~~』


 リンが走ってくる、良かった今日はもう来ないかと思った。


『ルナごめんね~~遅くなって、待ったでしょ?』


『ううん、僕もさっき来たところ、リンが待ちくたびれて落ちちゃったのかと思ったよ』


『落ちないよ~~朝まで待ってるよ~~』


『それは、なんかあったときに困るからやめて~~』


『あははは、じゃあ12時まで待つよ~~』


『シンデレラかよ~~』


『あははは、来なかったらガラスの靴をここに置いておくから~~』

 楽しい、本当にリンとの会話は楽しいでも僕は言わなければいけない事が


 少しチャットの間が開いた、ここで言う


 そう思いキーボードを叩きリターンを押す


『あのさリンに言いたいことが』

『あのねルナに言いたいことが』


『え』

『え』


 同時に同じことを言う、え?何?怖いんですけど……


『な、何?』


『えっとリンからどうぞ』


『ううん、ルナから言って』


『いや、リンから』


 気になって喋れない、なんだろ突然……


『えっと、じゃあ、あのごめんなさい、私これからあまりログインできないかも』

 え!僕と同じ事を先に言われる……


『あのね勘違いしないでね、ルナと喋りたくなんじゃないから、その、ルナと会うために私頑張ってるから!!』


『え?そうなんだ、実は僕も同じ事を言おうと思ってたんだ』


『そうなの?』


『うん、ちょっとわけがあってさ、妹の手伝いをしなけりゃいけないんだ』


『妹さんがいるんだ、何かあったの?』


『うん、まあ身内の恥を晒す訳にはいかないし、詳しいことは言えないんだけど、あ、決してリンを信じてない訳じゃないから』


『ううん大丈夫、私もねストーカーで人を信じられなくなっていて、ルナと会うのは怖い、でもルナを信じる為に、男の人を怖く思わないように協力してくれる人が出来たの、だから、ごめんねあまりログインできないかも』


『協力してくれる人?』

 え?協力するって、男がだよな、え?それって……

 何か心の奥で凄く不安な気持ちが芽生える、リンと男……


『あーー、ルナひょっとしてヤキモチ焼いてる?』


『えーー、そんな事ないよ』


『えーーー焼いてくれないの?』


『じゃあ少し』


『えへへへへ、大丈夫だよ、兄だから』


『お兄さんいるんだ?』


『うん、凄く嫌な兄で、私の事ブスって、超性格悪いし、今同じ学校に行ってるんだけど何かモテてたみたいで、でも相手を作らずに片っ端から振っていたらしい、多分エゴイストでナルシストで、自分がモテる事にいい気分になってるんじゃないかな?』



『えーー! リンのお兄さんに、こんな事言いたくないけど、なんだそいつ、最低じゃん』


『うん、でも身近にいるのは兄だけだから嫌だけどお願いしたの、そうしたら協力してくれるって』


『大丈夫?僕の為に無理しなくていいよ、夏休みとか期限つけたけど、もっとゆっくりにしても』


『ううん、それじゃ多分一生無理だと思う、だから期限がある方がいい、私頑張る!』


『僕の為に、ううんダメだねこれじゃ、リン頑張れ!僕はリンを信じて待つよ』


『うん!ありがとう、出来るだけインするから』


『うん!今夜は大丈夫なの?』


『うん!ゆっくり話そうね』


『わーーい、早速だけどさ、昨日のアニメみた?』


『見た見た、超感動したよね』


『僕ざまーーみろで泣いちゃった』


『私もーー、最初は何これっておもったけどさーー』



 朝までお喋りしてしまった、本当にリンとの会話は楽しい、これで実際に会って話したら一体どうなるんだろう……


 もうじきリンに会える!!!


 僕は期待に胸を膨らませていた、そしてそのリンの兄という嫌な奴に少し嫉妬していた。


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