いっすんさき よそう も できN
前略
タカシです。
"渡る"と言われるがまま、連れられてきたところは逃げ込んだ場所のままでした。
そして、急に嫌な予感というよりも、鋭い寒気みたいなものが一方向から漂ってきていました。
他に変わった事はと思いつつ、建屋の中の周囲を見渡しても、これと言って変わったものは・・・ありました。
自分の手の内に、刀の柄みたいな物が転がっていました。
"早う手に取らぬか、さっさと"還し"に行かねばならんのだから"
唐突に凛とした人の声が聞こえてきましたが、声が聞こえるたびにその柄が震えている様な・・・
まさかと思っては、その柄を手に取ってみると、今度ははっきりとした声が聞こえてきました。
"何の為に稽古をつけたと思うておる、貴様には協力してもらう話ぞ"と言われたとたん、急にその柄に引っ張られるかのように、鋭い寒気がする方向へと向かわせる形になったかと思えば、いきなり外へと放りだされてしまいました。
かなり派手な音がしたのか、寒気がした方、つまりは見た目がどうみても餓鬼な存在がこちらに気づいたのか、変な奇声をあげながら走ってきました。
もちろん、ダッシュで逃げました。
境内にある社回りを一周する、という恰好でしょうか?とにかく走っては逃げ続けていました。
何周かしてると再び脳内に声が響いてきます。
曰く
”逃げるな!この
"我がおると言っておろうが!!”
"何のための稽古だったか!"
と。
そうは言われますが、刃も無く
まさか、某"
白い光の刃が出ました。
しかも、効果音が
"出ちゃったよ・・・"な状態になりながらも、とりあえず
"貴様、やはり
"なぜそれで逃げる!!"
と、さらに脳内に響いてくる声がより一層ヒートアップしてきます。
そういわれても、相手は訳のわからない存在です。
今まで経験した中でも、かなり異色な部類に区分けできます。
そもそも、これでは和製ファンタジー的なものとしか思えませんが・・・
そんな考えに至りながらも、その間にも一方的に頭の中に鳴り響いたかと思えば、
"もうよい!身体を貸りるぞ!!我があ奴を還してやる"
と言われた途端、身体から一切の自由が無くなり、餓鬼みたいな物と対峙してしまいました。
視界ではっきり物をとらえているという状況で、身体が自分の意思で動かせれないというのは、かなり怖い体験をしていたのではと思います。
迫りくる餓鬼(?)に対して、刀を構えては切りかかり・・・
結果としては、相手の一撃を横に避けては、みごとな袈裟斬り一閃という恰好で終わりました。
ただ、その瞬間を無理やり見せつけられている分には、いささか心的なダメージが蓄積されるという問題があると思いました。
切られた存在といえば、黒い粒が霧散するかのように消えていきました。
そういえば、紫色っぽい空も、いつの間にか青色の空へと変わっていました。
そうして、自由を取り戻した後に、眼前の大事は終わったとの説明をうけました。
結局、何がどうなったかとさらに説明をうけてみると、餓鬼道から堕ちてきた存在を、現是から元にいるべき場所へと還すという形にしたそうです。
そのために、切り付けて真っ二つにする行為が"還す"事に繋がるといわれましたが、何だか納得はいかないような、いくような・・・
ついでに、あの凛とした人の名前を聞き忘れ続けていたので、何気に聞いてみました。
襲名の契りが成され、今は第参百伍十八代目のイツノオノハバリ(襲名)さんとの事で、「オノ・ハバリ」または「ハバリ」と呼んでよいそうです。
旧名は、襲名が決まった時点で使えなくなったとの事で、"そちらでは呼ばせれなくてすまない…"とも言われましたが、旧名を知らないままなので何とも…
ただ、そのあとに続いた言葉で、そんな思考がすべて吹き飛びました。
"これからも、この様な事が起き続けると思うが、今後ともよろしく頼むぞ"
・・・えっ?コレって、続くの?
追伸
ハバリさんから聞いた話なんですが、
何でも、昨今、異界への門が
有象無象の存在が流れ出たり来たりする事があるそうです。
その影響で、こちら側の元々の界門が狂ってしまうとか何とかで、
何とかしようとしていたのが、ハバリさんのいる部署だったそうです。
そして、何でも自分が"その特異点のひとつ"という事だそうで、
何かしらの影響が発生するからと、同伴されるとか何とか・・・
('A` ):特異点…
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