なつの ゆうぐれ... ( )

 強い日差しが、明と暗をしっかりと境界線を引いては、動物たちですら陰へと隠れる中、一部の生命は短命の時期に役割をなそうとしている時分、いかがお過ごしでしょうか?





 タカシです。




 大聖官と言われる方に連れられ、箱船といわれる場所へと案内されては、その箱船の中の聖域と称されている場所へと赴きました。



 ”箱船”と言われましたが、まず、その形状を見たときに"ラ〇ュタは本当にあったんだ!"と言えそうな感じで、静止衛星的に空に浮かんでいる状態でした。



 異なる点といえば、古い建造物や巨大な樹とかはありませんでしたが、代わりにそびえ立っていたのが、脈打っている生物の血管の様なものが、ツタの様に絡み合っているというか・・・


 それらが歩く道や壁などにも縦横無人に張り巡らされ、微かに動いて・・・脈打っている状態でした。




 正直に言えば「キモい」の一言です。




 しかも、湯気みたいなものが脈打つ管から湧きあがり、なおかつ粘性のありそうな液体がしたたり落ちていたり、少々生臭いという点が、さらに「グロさ」を強調してきます。



 不思議・・・じゃなく、面白がっているテールは、その管のひとつを突ついては、反応をしてる状態を楽しんでいる様でした。




 よくある神聖的な場所、そんな風に思っていましたが、ここまで想像と違いすぎる内容に、悪魔的というか邪悪的というか・・・そんな印象しか思い浮かびませんでした。




 そうして、肉壁ともいえる通路を通りすぎた先にすすむと、少し開けた場所へと進むと、その先の肉壁に埋まっている何かがありました。



 どうやら、ここが聖域、だそうです。





 そして、先ほどから存在の主張をしている埋まっている何か






 巨大なサナギ(甲虫系?)の様な恰好をしている、昆虫のような物体というのが一番しっくりくると思います。


 折りたたまれた8本の脚?・・・どれも手があるから腕?に特徴的な腹の部分など、まさに図鑑にでも出てくる標本、そんな感じでした。


 そして、そのサナギに対して、ここまでくる道中でグロさを醸し出していた管が集約しているとでもいうのでしょうか。




 周囲のシチュエーションと、この巨大な昆虫オブジェから、どこからどうみても邪神的な何かとしかいえませんでした。


 ただ、レイが言うには、自分と同類・・の様な存在とは言っていましたが・・・




 そもそも、連れてこられたのはいいとして、自分がどうすればよいのかが皆目見当がつきません。





 なにしろ、自分の出来る事といったら、粉微塵にする事しかないわけですし・・・





 大聖官の方に聞いてみても、箱船の聖域で起きるという事が記録レコードに記されていることで、細かいことは何も・・・という事だそうです。




 とりあえず、あのサナギを粉微塵にすればよいのでしょうか?と、そう思ってみても、嫌な予感みたいなものは一切感じません。


 他には・・・と、接続されている血管?を粉微塵にする事を想定しましたが、嫌な予感をひしひしと感じてしまいます。


 ここまであからさまな"嫌な予感"というのは、何かしらあるのでしょうか?と、そんな感じで、色々と想定しては感じてみると、結局は、最初のサナギを粉微塵にする方向が、嫌な予感というものを一切感じません。





 ここまで露骨な差を感じを受けとれば、さすがの自分でもその直感を信じるのが正しいんだろうなと、そう思う事にしました。


 ただ、少し高いところにあるので、そこに行くまでが大変めんどくせでしたが・・・




 そうして、粘着力がありそうな粘液まみれになりながらも、なんとかサナギの前に到着し、サナギを攻撃するという認識で殴りつけてみました。



 まぁ、何時ものように接触する前にハジケトビましたが・・・



 はじけ飛んだあとに残された自分は、残った血管らしき管から大量にあふれ出る紫色の液体によって、自身を押し流しては、先ほどの祭壇の場所へと流されてしまいましたが、正直、匂いも物凄く生臭くて少し胃の中のモノを戻しかけました。




 とりあえず、自分の直感を信じたわけなのですが、先ほど粉砕した場所を見上げてみると、その場所には黒っぽい楕円のナニかが、そこに浮かんでいました。




 なんぞアレ?と思っていたのも束の間、その部分から8本腕が生える様にが現れたかと思えば、黒い甲虫の様な胴体に、ファンタジー的な竜の様な髭や牙が見える顎からは涎を垂れこぼし、その頭部にある一対の眼は赤い目玉をしていました。




 そんな、キメラすぎる何かが、此方を見据えている様でした。




 ただ、不思議な事に、"危険"という感じは一切なく、相手側からは何かしら"見抜いているぞ"とでもいう風な、そんな視線をしばらく受け続けました。


 そうして、何かが終わったような雰囲気のあと、最後に大聖官と視線を交わし、ソレは一対の羽を羽搏はばたかせ、宙へとゆっくりと浮いたかと思えば、次の瞬間には一気に空高く飛び去って行きました。





 いったいアレは何だったのでしょうか・・・




 そんな風に不思議に思っていたら、突然大きな揺れを感じました。



 周りをみわたせば、サナギのいた管の集まりだった部分が崩れ去り、そこを起点に消え去り始めていました。



 "主殿!はよう逃げんと!!""パパ!早く逃げよ!!"と、レイとテールにせかされていたのですが、そんな状況であっても、何故か危機感というか嫌な予感的なモノを感じずにいます。



 なにしろ、来た道へ逃げようとする方向の方が、マズいという認識に陥っています。

 逆に、大聖官の方へ近づけという恰好で教えてくれます。

 その直感に従い、大聖官へと近づくと


 

""異邦人"サま、ありガとうゴざいマす。これでワたシの役割ROLEを成せれマす"



 そう言葉が聞こえると、大聖官はおもむろに自身の腕を胸へと突き刺し、球体の何かを自分へと無理やり渡しては、床へと崩れ落ちました。



 えっ?という疑問の言葉と共に、とうとう自分の足場すら崩れ去り、大聖官もその崩れ去る中へと消え去るなか、手渡された球体が紫色に強く光り輝いたかと思えば、自分たちを包み込んでは・・・




                                 敬具



追伸

 見覚えのある場所

 見覚えのある夕暮れ時

 見覚えのある部屋

 覚えのあるひとり・・・きりの空間


 旅の間、いつも傍にいた二つの存在を呼んでみるも、返事はなく、

 ただ、手には光を失った球体を握りしめ・・・


 そういえば、大聖官の名は「フィックス」と言っていた事を思い出し・・・





('A`)・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る