少年期[1044]再認識と理解
「てめぇ!!! まだ言うかッ!!!!」
「何度でも言うに決まっているでしょう。あなた達があれだけ自信満々に大丈夫だというから付いて行ったものを……結果、全滅しかけたじゃありませんか」
(自信満々に、ね……)
ゼルートは一応冒険者同士のマナーとして、鑑定眼は使用せずにガルモと共に行動していた冒険者たちを視た。
(……………………どう、なんだろうな。糸の採集だけなら問題無さそうだし、武器の質と実力が不釣り合いっていう事もなさそうだけど……でも、ブラッドタラテクトと戦うってなったら……このガルモって魔法使いの実力を加味しても、勝率は五割を越えなさそうだな)
勝率は五割は越えなさそうというゼルートの考えは、ガルモと冒険者たちがブラッドタラテクト一体と戦うと仮定した場合の話。
そこにブラッドタラテクトが生んだ多数の子蜘蛛が加わった場合、勝率は間違いなくゼロである。
「うるせえ!!!! そもそも……てめぇらの対応が悪ぃんだろうが!! 忘れたとは言わせねぇぞ。逃げた方が良いって進言した冒険者を無視したてめぇら魔塔のバカが暴走した事件をな!!!!」
「むっ」
(暴走した事件? 冒険者たちが、自分たちの実力や探索力を多少盛ってたのかと思ってたけど……なんか、ちょっと事情がありそうだな)
ぶっちゃけた話、ゼルートたちにとっては本当にどうでも良い話である。
ゼルートからすれば、捕まっていたガルモたちを救出出来て、、ブラッドタラテクトの糸も手に入れられることが出来てめでたしめでたしである。
ただ……なんとなく、知っておいた方が良い話のように感じた。
「魔塔の魔法使いが、暴走…………昔、チラッと聞いたことがあるような」
「知ってるのか、アレナ」
「本当に昔、ちょっと聞いたことがあるだけよ。冒険者の忠告を無視して目的のために進んだ魔塔の魔法使いのせいで、結果的に魔物たちの暴走で一歩対応が遅れていれば、街が壊滅していてもおかしくなかった」
「ふ~~~ん。確かにバカだとは思うけど……それだけなのか?」
「これも噂程度に聞いた話だけど、その後に魔塔の魔法使いが冒険者ギルドや魔塔に嘘の情報を流して、生き残った冒険者たちに罪を擦り付けようとしたって」
魔塔に所属している人間からすれば、怒鳴り散らしてでも否定したい内容。
だが……ガルモは思い出しながら口にするアレナの話に対して、特に否定しようとはせず……ただ沈黙を貫く。
(その人は、割と性格が終わってた人なのかもな)
ガルモが沈黙を貫く様子から、やらかしてしまった魔法使いの性格がよろしくないのは割と知れ渡っていた。それを知っていたからこそ、ガルモとしてもアレナが口にした話を否定出来ない……というゼルートの予想は、ドンピシャで当たっていた。
「そうなんだよ! だから、もしここで断ったらって思っても仕方ないだろ!!!」
ゼルートに近づき、案に自分たちの味方になってくれと伝えてくる冒険者たち。
「………………まっ、平民から見た貴族に対するイメージに近いものなのかもな」
ここで、とりあえず「あなたも貴族なのよ?」とツッコむのは控えたアレナ。
「ん~~~~~~…………俺は、一応あんた達にとっては第三者だ。だから、あんまりあれこれ言えない。ただ、何か伝えるとしたら……まず、ガルモさんは冒険者たちから魔塔に所属してる人間がどう思われてるから、再認識した
方が良い」
「…………あぁ、承知した」
「んで、あんた達の考えも解らなくもないけど、魔塔に所属してる人間の中にも、ガルモさんみたいに冷静に退くという判断が出来る人がいるんだと……そこも解ってあげてほしいかな」
「……チッ! 解ったよ………………今回は、俺らが悪かった」
パーティーのリーダーも、ゼルートという名の冒険者の噂は聞いたことがあり、そんな有名人がここまで自分に優しく諭そうとしてるということもあり……今回は素直に怒りの矛先を収めることにした。
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