少年期[1021]○○○コング襲来

「これだな?」


「えぇ、それね」


ゼルートは見た目からして毒々しい果実を採集。

その果実には本当に毒があるものの、取り除けば癖はあるものの、殆どの者が美味いと答える。


とはいえ、ゼルートたちはそれを食べるつもりで採集したのではなく、採集依頼の為に木々に上り、ゲットした。


時刻は既に夕食頃から数時間ほど経過しており、発見に至るまでそれなりに時間がかかった。

だが、発見した場所に依頼に必要な数以上の実がなっていたこともあり、無事に日が暮れる前に採集することが出来た。


「よし!!! 必要な果実も見つかったし……ん~~~~、どうする? ちょっと早いけど、もう帰るか?」


「……私は構わない」


発見までに五時間以上が経過しており、その間にDランクやCランクモンスターと戦っていたことで、一応戦闘欲は満たされていた。


「そうね。早めの夕食も偶には良いわね」


当然、アレナも賛成。

意見が一致したところで、街に戻ろうとした瞬間……複数の風槍と土槍がゼルートたちに向けて放たれた。


「「「「「「ッ!!!!!」」」」」」


予想外の……誰も感知出来なかった襲撃ではあるが、直前に気付く。それだけで、ゼルートたちは十分に対応してみせた。


「今、ウィンドランスとアースランス……だったよな?」


「そうね。確かに二属性の攻撃魔法が放たれたわ」


この時点で、二人は同じ冒険者の……自分たちに嫉妬などの感情を抱く冒険者たちからの襲撃かと思っていた。


だが、攻撃を放った人物が姿を現すと、その姿にゼルートたちは驚きを隠せなかった。


「えっ……えっ!!??」


「え、えっと…………」


「ほぅ…………このような魔物もいるのだな」


ゼルートとアレナはまさかの正体に口を大きく空けて驚き、ルウナはニヤニヤと楽し気な笑みを浮かべた。


ゼルートたちの目の前に現れたのは、同じ人間の冒険者や騎士、魔術師ではなく……魔物であった。

それだけであれば、まだゼルートたちも驚かない。


メイジの名を持つ魔物が攻撃魔法を使用することは周知の事実。


故に、魔物が攻撃を放つこと自体に関しては驚くことではない。

ただ……ゼルートたちの前に姿を現した魔物は……杖を片手に持ち、マントを羽織っている……ゴリラであった。


「ぶっ!!!! あっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!! ま、マジかよ!! や、やべぇって」


大爆笑のゼルート。


「ぷっ、ふっふっふ」


アレナも大爆笑こそしないものの、笑いを堪えきれなかった。


しかし、二人とも全身に魔力を纏い、身体強化スキルは発動していた。


「ッ!!! ゴォアアアアアアアッ!!!!!!」


「散れっ!!!」


まだ若干笑いながらも、ゼルートは直ぐにアレナたちは各自の判断で散れと伝えた。


すると、先程までゼルートたちがいた場所を、大量の風刃が通り過ぎた。

出所は……ゴリラ魔物の杖。


(いや~~~~、ちょっと面白過ぎるだろ)


本能的に魔力を纏い、身体強化のスキルを発動した自分を褒めながらも、ゼルートは鑑定で視れた内容を思い出し……再び吹き出してしまった。


(ワイズって……確か、賢者って、意味だよな)


いきなり多数のウィンドランスとアースランスを放った魔物の名は、ワイズコング。

多数の属性魔法スキル、魔力操作のスキルも有しており、スキルレベルは五を越えている。


ランクはAと、ゼルートとアレナがその見た目に思わず笑っていた時、本能的に身体能力を強化していなければ、多数の風刃を回避出来なかった可能性が高い。


「ゴオアアアアアアアアアアッ!!!!!」


既にゼルートたちをロックオンしたワイズコング。


野太い雄叫びを上げる中、ゼルートたちが考えることは一つ。

いったい……誰が戦うのか。


「ゼルート殿、自分が戦っても、良いだろうか」


「おっ、ゲイル……久しぶりに戦る気が燃え上がってきた感じ?」


「はい。燃え上がってまいりました」


「そうかそうか…………よし。ルウナはこの前イレースタイガーと戦ったし、戦っちゃって良いぞ、ゲイル」


「ありがとうございます」


ゲイルが飛び出し、残りのメンバーが集合した際、ルウナは少々落ち込んでいたが……この前イレースタイガーと戦ったじゃんという言葉に返せる反論はなく、大人しく受け入れた。

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