少年期[1005]そっちの道を選んでしまった人たち

「あの、ゼルート……さん」


「ん? なんだ?」


アジトに到着してから数分間……たった数分間という時間で、殲滅完了。

誰一人として逃がすことなく、盗賊たちを全滅することが出来た。


そして盗賊団を潰した際に得られるご褒美タイム……溜め込んでいたお宝の分配中に、一人の男性冒険者がゼルートに声を掛けた。


「さっきのご、拷問? 凄かったです」


「あぁ……ありがと」


まさかアジトの場所を聞き出す為の拷問を褒められるとは思っておらず、少し反応に戸惑った。


「どうやったら、あんなに……迷いなくやれるんですか」


男は、拷問なんて人がすることではない!! 人としておかしい!!! なんて下手な正義感を振りかざすつもりはない。

それでも……まだ二十を越えていない、ルーキーの域から出たばかりということもあり、そういうのに慣れていない部分があった。


「えっと…………ん~~~~、そうだなぁ…………」


ゼルートは、普通の人間ではない。

強さ的な意味だけではなく、考え方に違いがあった。


(普通に、そういう人間は死んで当然みたいな考えがあったからなぁ……でも、そういうのを聞きたい訳じゃないんだろうな、この人は)


ゼルートは転生者であり、過激派な意見をSNSで広めるような学生ではなかった。


ただ、本当にただただ盗賊という罪もない人々を襲い、殺すことも躊躇わない……寧ろ好んで行う者に対して、罪悪感などをあれこれ考える必要はないと思っていた。


「…………どういった理由で盗賊をやってるのかなんて知らないけどさ。あいつらって、基本的に商人を襲って……はたまた小さな村を襲って、人を殺して奪ってって活動をしてるわけじゃん」


「そうですね」


「もしかしたら、そういう道しか選べなかったって答える奴もいるかもだけど……盗賊っていう、一応戦わなきゃいけない存在として活動できたなら、俺たちみたいに冒険者として活動する道も一応あったと思うんだよ」


「ッ、それは…………そうですね。そうだと、思います」


盗賊になるよう奴らがなれるわけ、という思いを、言葉を一旦冷静に飲み込むことが出来た。


ゼルートが話してるのは、ただ大前提の話である。


「でもさ、俺は冒険者になってからは……順風満帆に過ごしてきたけど、やっぱりなる前はアホほど頑張ってきたんだよ」


楽しいからという思いは確かにあった。

だが、それと同時に努力を毎日毎日積み重ねていたのも事実。


「頑張ってきたのは、あんた達も一緒でしょ」


「勿論だ」


「当然」


「へっへっへ。だろだろ……なのに盗賊になった奴らは、多分その頑張るって行動……坂道を歩くことから逃げたっと思うんだ」


ゼルートの言葉を聞いて、アジトに共にやって来た冒険者二人の心に……目の前の少年が何を自分たちに伝えたいのか、すんなりと入ってきた。


「普通に、一般人? として頑張る道から逃げて、殺して奪うって道を選んだんだよ…………仮にそういう奴らが、実は盗賊として活動はしてても、殺しは一回もしてない、捕らえた女性を一度も襲ってないとか言われても、信じられる?」


「「信じられないな」」


即答だった。


「情報を聞き出す拷問に関しては……やっぱ一応同じ人だからって躊躇するかもしれないけど……ん~~~…………やっぱりあれかな。クソ畜生の外道野郎の集まりって思えば、躊躇せずにやれるようになるんじゃないかな」


「なるほど……確かに、そう思えば……」


「まっ、それに快感を覚えたりしたら日常生活に支障が出たり、今度は自分がその外道になる可能性だってあるから、色々と気を付けないといけないとは思うけどね」


まだ冒険者歴は素人であるゼルートが伝えられるのは、ここまでだった。

どうやったら上手くやれるか、下手にそればかりに意識を向けない方が良いとも伝えた。


後は……彼ら自身が自分の信じられる道を進むだけである。

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