少年期[1004]寄り道するかも

「……世の中、何処にでもあぁいうのはいるな」


「そういう生き方しか知らない、出来ないって人もいるといるんでしょ。同情は出来ないけれど」


「それはそうだな。んじゃ、助けるぞ」


ゼルートたちの視線の先には、商人が盗賊に襲われていた。


まだ直接商人や積み荷は襲われていないが、護衛として雇われた冒険者たちでは……やや荷が重い。

そう思えるほど、意外と腕が立つ盗賊たちに襲われていた。


「ぶはっ!? な、なんだてめぇらッ!!!!」


「助っ人だよ」


助っ人……とは言うものの、ゲイルたちも含めて、数は六。

護衛依頼を受けていた冒険者たちの数も含めれば……襲撃者である盗賊団の数を越える。


「勝手ながら、参戦させてもらいます」


「助かる!!!!」


リーダーである男に変なプライドなどはなく、有難くゼルートたちの参戦を歓迎した。


それから一分と経たず、商人を襲って積み荷を奪おうとした盗賊たちは殲滅された。


「んじゃあ、アジトの場所を教えてもらおうか。あっ、まだ若いけど、こう見えても拷問は出来るんだ。回復魔法もあるから安心しろ」


一人だけ生かされた盗賊は、ゼルートによって味の場所を吐くまで爪を剥がされ、指を切断されたりと、割と粘った

ものの…………回復魔法を使用されて二周目に入ると、さすがに根を上げた。


「ありがとさん」


アジトの場所を聞き終えたゼルートは、拷問という苦しみから盗賊を解放し、痛みを感じることなく逝かせた。


「誰か、付いてきますか? こっちには、ゲイルたちを残そうと思ってるんですけど」


戦う中で、まだ青年になってない少年と美しい人族の女性と獣人族の女性。

そして個性のある従魔たち……そのパーティー構成から、目の前の人たちがあの有名なパーティーだと判断。


結果、商人の許可も得て二人の冒険者が参加。

ゼルートはその二人とルウナを連れて、盗賊たちのアジトへと向かった。


「あの、アレナさん。本当に、助かりました」


「そういうのは、リーダーのゼルートが戻ってきたら彼に言ってあげて」


「はい…………あの、アレナさんたちは今、何処かに……目的地に向かう途中、なんですか?」


まだ冒険者として活動を始めて五年も経ってないが、純粋な冒険者としての功績。

そしてディスタール王国との戦争に参加した際に、暴れに暴れたことによって得た名声により、多くの同業者たちの耳にゼルートという名前が入った。


当然、ゼルートと三つや四つぐらいしか歳が離れてない冒険者たちからすれば、あのゼルートが何処かに向かおうとしてる、冒険しようとしてる……いったい何処でどんな冒険をしようとするのか、気にならないわけがなかった。


「そうね。ここ最近はのんびり休んでたけど、ゼルートが今度はここを冒険してみたいって言いだしてね。今はそこに向かってる途中なの」


「そうなんですね。もしかして、ホーリーパレスのようなダンジョンに?」


「さぁ……どうかしらね。もしかしたら、そういう場所にも挑むかもしれないわ」


本来の目的は大魔導士の杖を探すことだが、パルブン王国は弱小国家などではなく、それなりに広大な土地を有している。


当然、複数のダンジョンを有しており、そういった寄り道をする可能性はゼロではない。


(伝説は伝説……だからこそ探してる人たちはいるでしょうけど、だからといって簡単に見つからない。見つかったとしても、ゼルートにとってそれはそれでって話でしょうしね)


ゼルートは戦争時に見せた様な特大魔法も使用出来るが、それでも本人は自分は後衛ではなく前衛だと語っている通り、ただ冒険がしたいだけで、杖を先に誰かが発見したのであれば、そはそれで仕方ないと諦められる。


権力や物理的な力を利用して奪い取ろうとは、一ミリも考えていなかった。

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