兄の物語[66]三日後
「ッ、あぁ~~~……アホいてぇ」
「呑み過ぎ、なのよ、バルガス」
「うっせ。そういうお前だって、ふらついてんだろ、ペトラ」
次のギルドからの依頼を達成すれば、Bランクの昇格試験を受けることが出来ると知った翌日、呑み過ぎたバルガスと……バルガスやフローラよりは呑んでいなかったが、いつも以上には呑んでいたペトラが二日酔いに悩まされていた。
「二人とも重症だね~~~~」
「そうだな、フローラ」
「……クライレット、なんでお前は無事なんだよ」
「いや、言うほど無事ではないぞ、バルガス。正直、軽い頭痛はある。ただ、我慢すれば耐えられるってところなだけだ」
平気そうな顔をしてるクライレットだが、もう少し……呑む量を誤っていれば、二人の様に完璧な二日酔いに悩まされていてもおかしくなかった。
流石の危機回避力? と言えるだろう。
「そう、か。けど……やっぱ、フローラはマジでおかしい、な」
「まだまだ鍛錬が足りないね~~」
「鍛錬って、何を鍛錬すりゃいいんだよ」
まだツッコむ気力があるだけ、最悪な状態ではない。
殆ど喋る気力がないペトラに比べれば、まだ軽い。
「とりあえず、出発は……三日後ぐらいが良さそうだね」
「そう、ね。今日は…………休ませてもらうわ」
一応食堂に降りて朝食を食べたペトラだが、フラフラな体を引きずりながら部屋に戻って行った。
「わり、俺も休むわ」
「分かった。三日後までには直してくれ」
「おぅよ~~~」
バルガスもフラフラしながらや部屋に戻り、そのままベッドにぶっ倒れた。
「さて……フローラ、この後どうする」
「そうだね~。どうせなら、ギルドの訓練場でちょっと付き合って欲しいかな」
「分かった。それじゃあ、早速行こうか」
食後の運動がてら、二人は冒険者ギルドの運動場に向かった。
運動場ではまだ朝だというのに、冒険者たちの姿がちらほらと見える。
「それじゃあ、まず細剣だけで攻撃してもらっても良いかな」
「分かったよ」
準備運動後、事前に話していた通り、クライレットは木製の細剣を握り……軽く攻撃を始めた。
それらをフローラは最小限の動きで躱し、軽量タイプの盾で捌いて行く。
(もう、これぐらいの速さだと全く意味がなさそうだね)
フローラのメインの役割は、盾や大盾で敵の攻撃を受け流し、受け止めること。
そのために、これまでクライレットやバルガス、ペトラたちパーティーメンバーだけではなく、他の知り合った冒険者たちにも頼みガード、受け流しの訓練に付き合ってもらってきた。
クライレットの攻撃は対応してきた攻撃の中でもトップクラスの速さを持つが、これまで何度も訓練に付き合ってきてもらったこともあり、素の状態では一度も体に掠ることなく対応出来る。
「フローラ、上げてくよ」
「どんとこい、だよ」
宣言通り、ギアチェンジしたクライレット。
身体強化のスキルを使用したことにより……超加速し、訓練場に突きが空を切る音が聞こえる。
しかし、フローラはその突きを見事躱していた。
(う~~~ん、魔力を纏ってないのに、相変わらず恐ろしい突き、だね)
心の中ではクライレットが放つ突きやその他の攻撃に対して賞賛を送るものの、身体強化を使った状態であっても、放たれる斬撃や刺突に全て対応し続ける。
「クライレット、他の攻撃も、入れてちょうだい」
「分かったよ……それじゃあ、いくよ」
一番得意な得物は細剣。
だが、それ以外の攻撃も行える。
まずは攻撃魔法。
「っと、よっ!! ふんっ!!!!」
「ウィンドランスを、ぶっ叩く、か」
何かを懸けて戦っている訳ではなく、ただの訓練。
故に厭らしい軌道や部分を狙っての風槍ではなかった。
ただ、フローラは大盾ではなく、比較的軽い丸盾でクライレットが放ったウィンドランスを弾き飛ばした。
「もっと上げてくよ、フローラ」
「良いよ、もっともっと、上げてみて!」
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