兄の物語[49]やや劣る
「ここが、ドーウルス一の鍛冶師の店ね」
目的を切り替えたペトラたちは直ぐに武器屋ではなく、武器に店を売る鍛冶師について調べた。
そして当然……オーダーメイドを頼む鍛冶師は一流の鍛冶師。
(……もう、心配するのは止めよう)
覚悟が決まったクライレットは一切文句を言わず、仲間の後に付いて行く。
「あら、お客さんですか」
ドアをノックすると、一人のハーフドワーフの娘が現れた。
「こちらがドゴールさんの鍛冶場でよろしかったでしょうか」
「はい、その通りです……あっ! もしかして今話題のクライレットさんたちでしょうか」
「えぇ、その通りです。今回は是非、ドゴールさんにクライレットの武器をオーダーメイドしようと思って窺わせてもらいました」
「そうだったんですねぇ。あ、申し遅れました~。私はハーフドワーフのパラです」
自然と険悪な空気になることが多いエルフとドワーフだが、ハーフドワーフである自分に対してとても丁寧な対応をしてくれるペトラに対し、慌てて自己紹介を行ってから中に案内。
「親方は今制作中ですので、少々お待ちください」
「分かりました」
客間からでも金属と金属がぶつかり合う音が聞こえる。
エルフであるペトラは、昔はこの音がやや苦手であったが、冒険者として活動するようになってからは、割と好みの音へと変わっていた。
特に……腕が高い者が行う音ほど、良い音だと感じる。
「ところで、親方にオーダーメイドを頼みに来たのは、今使っている武器が壊れたからですか?」
「いや、そういう訳ではないんですよ」
苦笑いを浮かべながらミスリル製の細剣を取り出し、抜いてパラに見せた。
「むむむ~~~……良い細剣ですね」
あまり女性がいない鍛冶師の世界で、そこら辺の男には負けない腕を持つパラ。
まだ親方であるドゴールには一人前だと認められてはいないものの、それでも本人は並以上の腕はあると思っており……事実、その腕を買われて彼女にオーダーメイドを頼む冒険者も存在する。
だが、クライレットが取り出して見せてくれたミスリル製の細剣は、同じ素材を用意されても……絶対に同等のクオリティの物を造れるとは断言出来ない。
「まだまだ寿命がくることはなさそうですが? 手入れもしっかりされてますし」
「ドーウルスに来て活動するようになってから、これまで以上に強敵と遭遇する機会が増えました」
「そういえば、この前普通ではないリザードマンジェネラル? と戦ったんでしたね」
鍛冶師という名の職人たちは……仕事に没頭している人であればあるほど、造ることに夢中になり過ぎて、情報の収集を疎かにする傾向がある。
しかしパラは器用に情報を集めており、クライレットたちが普通ではないリザードマンジェネラルの討伐以外にも、どのような功績を達成しているのか知っている。
「はい、そうです。なので、これから活動し続けていけば、いずれAランクの魔物と遭遇するかもしれません。そうなった時、一つでも頼れる武器が欲しいと思って」
元々自分の武器に関しては、今使っているミスリル製の細剣で構わないという思いは確かにある……だが、それと同時に仲間がピンチの時に助けられる武器が欲しいという気持ちもあった。
「なるほど~。そうですねぇ……もしAランクの魔物と戦う機会が巡ってくるとなると、このミスリル製の細剣だと…………どういった魔物と戦うのかにもよりますが、鱗や皮……肉は斬れても、骨が……ギリギリ斬れるか否かというラインでしょうか?」
パラは実際にAランクの魔物と戦ったことは当然なく、ましてや生きている姿を見たこともない。
だが、Aランクの魔物を倒した武器なら見たことがある。
現在クライレットが使用しているミスリル製の細剣は、まさに冒険者が自身の命を預けるのに相応しい得物である。
ただ……以前見たAランクの魔物の命を奪った武器と比べると、やや見劣りしてしまうは確かだった。
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