兄の物語[34]そこは変ってない?
「へぇ~~~、クライレットたちはBランクに昇格する為にドーウルスに来たんだな」
「そうなんだよ。ここなら、必要な功績を手に入れられるぐらい強い魔物と遭遇出来そうだからね」
今回遭遇したリザードマンジェネラルの様なケースは想定していなかったものの、襲われていた同業者を結果的に助けたということもあり、ただBランクのモンスターを倒すだけよりも追加で評価を得られた。
「やっぱ、そのあぶねぇ武器を持ったリザードマンジェネラルは強かったか」
「あの邪剣を持ってたからか、攻撃を食らっても怯まずに反撃してきたわ。腕力や高い回復力も厄介だったけど、良い攻撃が入ったにも関わらず、殆ど怯まず反撃してくる。後方で色々と考えながら戦うタイプの私にとってはそこが一番最悪だったわ」
「そりゃ確かに最悪だな」
基本的に前に出て全力で得物を叩き込むのが自身の戦闘スタイルであるテックだが、ある程度後衛の同業者たちが抱えている苦労は解っているつもりである。
「けどよ、あれだけ堅かったら超殴り放題だし、俺はスリルはあったけど結構楽しかったぜ!!!」
「……今回は、こいつのバカさ加減に救われた部分が無かった訳ではないのよね」
止まらない連撃を得意とするバルガスにとって、自身の攻撃を用意に耐えるリザードマンジェネラルは、非常に殴りごたえがある強敵だった。
「真っ直ぐ向かって殴り合うのが好きなメンバーがいると、互いに苦労しますね」
「「うぐっ」」
テックはなんだかんだで突貫して得物をぶつけ合うのが得意であり、タンクの役割を担うソンも……ボルテージが一定以上に達してしまうと、片手に持つ槌でぶん殴ることに執着してしまうことがある。
「二人共ちょっとダンと似てるところあるもんね」
「ダンって言うと、ミシェルの弟だったね」
「今は領主の騎士団でも活動してるのだったかしら?」
「そうそう。身内だからかもしれないけど、ゼルートに説教された時と比べて、色んな面で強くなったと思うんだ」
ミシェルの言う通り、姉が大好きな部分は変わらないが、それでも自身の何がいけなかったのか……ここ一年でみっちりと叩き込まれた。
当然、戦闘力も向上している。
「…………なぁ、もしダンの奴がクライレットと出会ったら、いきなし勝負を挑みそうじゃねぇか?」
「クライレットがゼルートの兄だからか? それはやや安直な気がするが…………むぅ。あり得ない話ではない、か」
「私は全然あり得ると思うな~~。だって、ダンってまだまだゼルートを越えることを諦めてない感じじゃん? だから、こう……クライレットを下に見てる訳じゃないと思うけど、とりあえずクライレットには負けられない!!!! て思ってそう」
「彼はミルシェの言う通り、内面も成長していると思いますが、絶対にあり得ないと言えませんね」
メンタル面も確実に成長しているという考えは四人共同じだが……姉や家族が関わるとなると、話は別である。
実は騎士団の一員としてして活動している期間内にも、大きな問題ではないが……一応問題と言える件を起こしてしまった事がある。
「話を聞く限り、それなりに強いんだよね。それだったら、僕としても模擬戦はしてみたいかな。まぁ……普通に接してくれたら嬉しいけど」
新しい友人の弟……となれば、あまり険悪な仲にはなりたくない。
ただ、クライレットとしても相手が初っ端から偉そうで面倒な態度で接してこられると……自身の不満を飲み込んでまで仲良くしたいと思わない。
そんな簡単に不満を飲み込めるのなら、子供の頃に家族を侮辱された結果、同世代の子供を叩き潰すことなどなかった。
「ま、まぁあの五人みたいにダルい絡み方はしねぇと思うぜ? ダンの奴も正真正銘のバカじゃねぇからな」
フォローになっているのかなっていないのか解らないが、クライレットとしては……なんとなくドーウルスに滞在している間に遭遇しそうなため、テックの言う通り正真正銘のバカではないことを願った。
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カクヨムコンテストに向けた新作です!!!!
転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。
主人公の性格は少々我儘、自分本位で行動している為、ご了承いただけると幸いです。
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