少年期[989]もうビビる相手はいないだろ?

「ところでゼルート、そちらの女性二人はお主の仲間として……そっちの者どもはお主のなんなのだ?」


「実は最近、冒険者ギルドの方からルーキーたちの指導を行って欲しいと頼まれたんですよ」


「ほぅ~。つまり、そやつらはお主らの教え子と言う訳か」


「そういう事になりますね」


「そうかそうか……それで、何故そやつらを私の前に連れてきたのだ?」


特に怒ってはいない。

自身の居場所がゼルートたち以外の者に知れたところで、自身を同行できる者など数がしれている。


ただただ、純粋に疑問だった。


「彼等は先日、十人がかりではあるんですけど、リザードを彼等だけで倒したんですよ。その褒美として……この先どんなモンスター、盗賊などと遭遇してもビビらない体験をさせてあげようと思って」


「はっはっは!!! なるほど、そういう事だったか」


ラガールだけではなく、ルーキーたちも何故自分たちがこのような場所に連れてこられたのか納得。


全く圧を放っていないにもかかわらず、存在感だけで駆け出しのケツの殻が取れてない連中を失神させてしまう。

そんな身に纏う空気と見た目を生で見れば……そりゃこれから先、どんな敵と対面してもビビらず冷静に立ち向かえる……もしくは対応出来るというもの。


その後、ゼルートは手際良く食事を容易。

ラガールは普段の姿のままでいる必要はもうないと判断し、人型へと変化。


「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」


「なんだ、お前ら。ラルが人の姿に慣れるって話は聞いてないのか?」


途中からもう隠す気が殆どなくなっていたため、知っている者は知っている。


ただ、ルーキーたちの耳にはまだ入っていなかった。


「そっか。うちの従魔たちは全員人化が出来るんだよ。んで、ラルのお母さんであるラガールさん当然の様に人化が出来るって話だ。っし、ほら。お前らもどんどん食べてけ」


この日の昼食は肉がメインではなく、ラルフロンの海域で仕留めた魚類系モンスターを使用した海鮮丼がメイン。


「ッ!!!! ……ゼルート、この料理はまだまだあるか?」


「安心してください。身はまだまだありますし、ご飯も大量に炊いてあるんで」


ラガールだけではなく、恐る恐る生の魚の身と米を一緒に食べたルーキーたちも同じ反応になる。


「安心しろって。マジでちゃんと大量にあるから」


ゼルートは自身の分も食べながらも、完全に足りなくなる前切り分け、追加で米炊きを行う。


「そういえばゼルート」


「はい、なんですか?」


「おそらくだが、闇竜の子供がそろそろ本格的に動けるようになっている筈だ」


「ッ……それって、ラガールさんが昔戦った闇竜の……」


「うむ、以前知り合いのドラゴンがこっそりと教えてくれてな」


当然……という言葉で納得出来る事情ではないが、世の中にはラルやラガール以外にも人の言葉を喋り、人化を使用するドラゴンがいる。


その中の一頭である闇竜と遥か昔、ラガールは命懸けの激闘を繰り広げ、片足が欠けた。

偶々ゼルートという色々と異次元の存在に出会わなければ、今でもその脚は欠損したままである。


「……見つけ次第、叩き潰した方が良いですか」


「いや、闇竜だからといって全闇竜が面倒な連中という訳ではないのだが、一応気を付けておいて損はない筈だ」


「分かりました。でも、ラガールさんが一応そう言うドラゴンと戦えるとなったら、ラルやラーム、ゲイルは多分大喜びだと思いますよ」


「はっはっは!!!!! そうかそうか……頼もしくなったものだな」


因みに、ゼルートもその闇竜の子供とちょっぴり戦ってみたいとは思っており、ルウナは当然の様に戦る気満々状態。

アレナは……意外にも呆れるような表情は浮かべておらず、自分であればどう戦うかを脳内でシミュレーションしていた。

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