少年期[988]記録しておいて損はない

「まだまだ料理はあるから、がっつり食えよ」


「「「「「「「「「「はいっ!!!!!」」」」」」」」」」


ルーキーたちが全員でリザードを討伐した後、直ぐに解体を行い、ゼルートはリザードの肉や内臓を使った料理を作り始めた。


まだ時間としては昼食を食べ終えてからそこまで経っていないが、人生最大の緊張感に耐え続けた彼らは大きく体力を消費していた。

それもあって、ゼルートが調理した料理を一気に平らげていく。


「美味い、美味いっす!!!」


「はは、そうだな!! なんでか分からねぇけど、超美味い!!!」


十人でとはいえ、苦労して倒した魔物の肉だからこそ、彼らはその味に強い感動を覚えた。

中には涙を流しながら食べる者もいたが、誰もその涙を茶化す者はいない。


(体力は皆かなり消費したみたいだけど、骨折したやつがいないってことを考えると……なんだかんだで優秀だよな~~~。教師? って柄じゃないけど、教え子たちが結果を出すとこっちまで嬉しくなるな)


感慨深いと思いながらも、肉を調理しては果物と野菜を適当なサイズにカットしていく。


その結果……前回の昼食時と同じく、ルーキーたちは極度の満腹状態となり、その場から殆ど動けなくなってしまった。


「ったく、しょうがないな。お前ら、苦しいのは解るけど、軽く歩いたりして適当に体は動かすんだぞ」


「「「「「「「「「「は、はい……」」」」」」」」」」


約一時間後、ギルド職員たちは信じられないといった思いを顔に出すも……ルーキーたちの指導者であるゼルートからの回答は変わらない。


「こいつらだけで、リザードを倒しました。これは事実です」


「そ、そうなん、ですね……」


「ふふ、何もだからといって、いきなりこいつらのランクを上げろとか言ってるわけではありませんよ。倒したリザードのレベルも十五と、そこまで高くはありません。ただ、ギルドの記録として彼らが力を合わせれば、そういったレベルの魔物は倒せる……そう記録していてもよろしいかと」


「か、かしこまりました」


リザードの素材は……お世辞にも鱗などは綺麗な状態ではないが、それでも骨や魔石は殆ど無事だったこともあり、それなっりの収入がルーキーたちの懐に入った。


「それじゃ、また明日な」


指導係の期限は後二日。

彼等が本当に自分たちの力でリザードを倒したこともあり、ゼルートは褒美も兼ねて、ルーキーたちをとある場所へと連れて行く。


「ぜ、ゼルートさん。今日は、鉱山で実戦訓練、ですか?」


「ん~~~~……まっ、それは後でだな。今日はお前たちを連れて行きたい場所があるんだよ」


「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」


鉱山内でなければ、いったい何処なのか……全く見当が付かない。


だが、事情を訊いているアレナとルウナたちだけは知っている。

ルウナはワクワクが抑えきれない笑みを浮かべており、アレナは緊張がずっと消えない状態が続いていた。


「っ!!?? ぜ、ゼルートさん。その、こ、ここここの先に、何かが、いるんです、か?」


勘の鋭いルーキーはまだそれの姿が見えていないにもかかわらず、それが放つ存在感を感じ取っていた。


「ふふ、この距離で良く気付いたな。その通りだ。この先に、何かがいる。でも安心しろ。その何かはお前らを襲う事はない」


一歩……更に一歩近づいていくごとに、一人……また一人とその何かが放つ存在に気付く。


「あ、ああああああああれって、もしかして!!!!」


「そう、そのもしかしてだ」


ルーキーたちの眼の前にいる何かは……一体のドラゴン。


「久しいな、ゼルート」


「どうも、お久しぶりです。ラガールさん」


巨大なドラゴンの名は、雷竜帝ラガール。


雷属性の中でも最強と称される実力を持つ竜種であり、ゼルートの従魔であるラルの母親でもある。

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