少年期[943]心当たりはある

「ぜぇえええああああああああッ!!!!!」


「ふんッ!!!!」


「ほらほら逃げんなよっと」


「ッ!!!???」


甲羅という最大な防御壁と砲台をなくしたフォーシックタートルの戦闘力は、半減したと言っても過言ではない。


そんな状況で怪物三人の攻撃をしのぐことは不可能に近く……甲羅を破棄されてから、三分とかからず撃墜された。


「ふぅ~~~…………本当に、本当に楽しかった」


「ここ最近の戦いの中では、ルウナさんの言う通り本当に楽しめる戦いでしたね」


「良い魔力操作の訓練にはなったな」


ゼルートとしては、基本的にフォーシックタートルが海中に逃げない様に攻撃するのがメインの仕事だったので、あまり戦ったという充実感はなかった。


「Aランクの魔物を相手に訓練って……解ってはいるけど、本当に驚かされるわね」


「流石ゼルート殿だ」


「皆お疲れ~~~!!!」


砕けて海中に落ちたフォーシックタートルの素材は既にラームが回収済み。


ボス撃破の報酬として出現した宝箱も回収。


「……どうやら、この部屋がラストだったみたいだな」


ボス魔物であるフォーシックタートルを撃破したが、入り口とは反対の壁に扉が出現することはなく、帰還用の魔法陣だけが出現。


「ふむ……楽しかったのは楽しかったが、もう少し階層が欲しいところだったな」


「五十層まであれば、五十階層のボスはSランクの魔物だったかもしれないしな~」


「あんまり恐ろしいこと言わないでよ」


Aランクの魔物でさえ、十分災害と呼べる存在。

それを超えるSランクの魔物ともなれば…………基本的にボス部屋から出ることのない存在だと解っていても、身震いが止まらない。


(全員で戦えば無事に倒せそうだけど……それでも本当に遠慮したい相手よ)


とはいえ、アレナの記憶の中に……Sランクの魔物がボスとして存在するダンジョンはあった。


「何を怯えてるんだアレナ。ゼルートがいるのだから、たとえSランクの魔物が相手でも、問題無く討伐出来るだろ」


「……ここで否定出来ないのは良い事なのだと思うけど、色々と複雑ね」


何はともあれ、これで海中ダンジョンの探索は終了。

帰還の準備をして魔法陣になり、ダンジョンの外に脱出。


まだ日が沈んでいないこともあり、ダンジョン内で倒した魔物の解体をぶっ通しで行う。


「すいません、ちょっと良いですか?」


「あ、はい。なんでしょうか」


依頼の報告、素材の売却を行っていた冒険者たちが少なくなった頃、ゼルートは冒険者ギルドに訪れ、受付嬢に一つの紙を渡した。


夜のお誘いかと一瞬緊張するものの、手紙の内容を読み……違う意味で表情に緊張が走る。


「……」


数秒の間完全に固まってしまうが、復活した受付嬢は渡された紙に言葉を記し、真偽の確認を行う。

本当だとゼルートも紙に書いて返答。


結果、ゼルートはギルドの完全防音機能付きの個室へと通された。


「受付嬢の方から話は聞いておりますが、その……ほ、本当なのでしょうか」


「えぇ、本当です。ラルフロンの海域から少々離れた場所に海中ダンジョンがありました。場所的にはこんな感じです」


「ッ…………」


それなりに場所が分かりやすい地図一枚……だけではなく、次から次へと資料が取り出される。


「階層は全部で四十層。場所が場所なんで、そもそもルーキーが無事に到達出来る場所ではないと思いますが、基本的にDランク以下の冒険者は入場を規制した方が良いかと」


「…………」


ギルドの上役は、決してゼルートの話を聞いていない訳ではない。

ただ……亜空間から取り出された、まだ未完成であろうマッピングされた地図を見て、驚きを隠せなかった。


(ぜ、ゼルートさんたちのパーティーは戦闘に特化したパーティーと思っていましたが、まさかマッピングまで……戦闘面で優れていることもあり、戦い方やボスの攻略法まで細かに記されている……)


用意された地図の数々を見て、感動すら覚えた職員。

しかし、驚き終わるのはまだ早かった。

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