少年期[940]それが戦争
「それで、結局ディスタール王国に行くの?」
「行くしかないだろうな」
「こっちが向こうに行くのか? 向こうから決闘を頼み込んで来たのだから、そのディスパディア家の連中がこちらに来るのが筋というものではないのか?」
ルウナの言葉は正しい。
普通に考えれば、それが当然なのだが……ゼルートの頭には最悪の展開が浮かんでいた。
「普通はそうだろうな。俺も手紙を読んだ時は、そうであるべきと思ったけどな……ディスパディア家の連中に、過激派がいたらどうする」
「過激派というのは……どういうことだ?」
「そういう事ね~」
ルウナは首を傾げるが、アレナはゼルートが何を言いたいのか直ぐに理解した。
「どういう事なんだ、アレナ」
「本当にゼルートがローレンス・ディスパディアを倒したのか、その身をもって確認したい人たちはいるでしょう。でも、過激な騎士とかはこちらの住人や冒険者、運が良ければ騎士たちを殺して、少しでも自分たちの無念を晴らそうと考えて、暴走する人が現れてもおかしくないでしょ」
「………………」
開いた口が塞がらなくなる。
数秒ほど、仲間が言っている言葉の意味を理解出来なかった。
「それは……騎士として、貴族としてどうなのだ?」
「あり得ないでしょうね。でも、人は理屈で動く生物ではない……それはルウナも良く解ってるでしょ」
「いや、それは……まぁ…………しかし、状況が異なるというか」
「自分たちの行動のせいで、国が……使える主人の立場がどうこうって考えられない。そういった連中がいてもおかしくない。というか……個人的に、普通の人間をそういう思考に変えてしまうのが戦争だと俺は思う」
相変わらず子供らしくないセリフを口にするゼルート。
しかし、今のゼルートには数々の修羅場を潜り抜けてきた実績もあって、その言葉に確かな重みと説得力があった。
「まっ、そういう訳だから俺たちが向こうに出向くんだよ。そうすれば……仮に襲撃を受けるにしても、俺たちだけで済むだろ」
「それは……そうなるな。私としても、私たちを狙う様な強者との戦闘は大歓迎だ」
「ルウナ、本当にあなたは相変わらずね」
なにはともあれ、ゼルートたちのこれからの予定は決まった。
「んじゃ、さっさと返事を書いちまおう」
了承の胸を伝える返事を印、冒険者ギルドへ王都までの配達を頼む。
書類の内容が内容であるため、ギルドは現時点で用意出来る最強の護衛を用意した。
「よ~~し、それじゃ予定に間に合わせるために、攻略を進めるぞ!!!」
面倒事に巻き込まれながらも、直近の目標は忘れていない。
そう……ゼルートたちはここ最近、ダンジョン攻略に勤しんでいた。
そして遂に、数日もあれば四十階層に到着出来る。
予想通り、三日後には四つ目のボス部屋前に到着。
「ふっふっふ……さすが中の様子は解らないけど、結構ヤバい気配を感じるな」
「Bランク魔物が四体か?」
「ルウナとしては、Aランク魔物の方が嬉しいんじゃないの?」
二人も同様にボス部屋の中から、薄っすらとただならぬ気配を感じていた。
「今回、僕は遠慮するよ。ブルーシーサーペントとの戦いで楽しめたからね」
「ふむ……それなら、自分もサポートに徹した方が良さそうですな」
ラームとゲイルは、強敵と自分メインで戦うのを辞退。
そして当然の如くアレナも自体。
「まっ、参加の有無はボスの数が分かってからじゃないとな」
壁の前に立つだけでは、中にどんな魔物が待ち構えているのか分からない。
全員大なり小なりドキドキワクワクしながらボス部屋の中へ入場。
「わぉ……で、デカいな」
ボス部屋の中でゼルートたちを待ち構えていたのは、一体の超巨大亀だった。
Aランクの魔物、フォーシックタートル。
まず地上では殆ど遭遇することはない、超巨大な怪獣。
個体さはあれど、比較的好戦な種族であり……ゼルートたちが誰をメインにするか決める前に、水のバズーカ砲を放った。
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