少年期[936]ダルい相手
「ッ!! ちょっと待て!!!」
「?」
冒険者ギルドの職員から、上に行くための功績がほしい実力がある若者の集団たちが負けたと聞き、翌日から早速海に向かってブルーシーサーペントと、それに従うシーサーペントたちを討伐にしに行こうと港付近に到着すると……幾人かの同業者たちに呼び留められる。
(こいつらは……あの時、割って入ってきた連中の数人、か。元はもっと人数がいたから……あれか、戦闘を続行しようとしてる派の連中か)
ゼルートの予想通り、呼び留めた数人はまだ自分たちが百二十パーセントの力を出せば、ブルーシーサーペントに勝てると思っている愚かな連中。
「もしかして、ブルーシーサーペントを討伐するつもりか!」
「そうですけど? お前らが失敗したんだから、予定通り俺たちが討伐しに行くだけですよ」
ゼルートの立場を考えれば、無視してそのまま討伐に向かっても問題はない。
若者たちの問いに答えたのは、ゼルートの優しさとも言えた。
しかし、根拠のない自信を持つ若者というのは、えてしてこういったシーンでは必ず反発するもの。
「ふざけるな!! まだ俺たちは終ってない!!!!」
「終わってないって……同期の連中が数人死んだんだろ」
「まだ全滅はしてない! 俺たちが残ってる!!!!」
頑なにまだゼルートたちに譲りたくないという思いが顔に現れているが……正直、ゼルートとしては鬱陶しい。
「自分たちが死んだ奴らの仇討ちをするんだって息巻いてるのかもしれないけど、仇討ちをするどころか死んだ同期と再会するだけだから、バカな真似はしないでくださいね」
「「「「ッ!!!!」」」」
あまりにも見下し感が丸出しの言葉を受け、彼らの怒りは一瞬で沸点を破壊して限界突破。
全員が……さすがに武器は抜かなかったが、拳を振りかざして駆け出す。
(冷静さを保てないから、同期を見殺しにしたんじゃないのか?)
心の中で感情を制御できない彼らを指摘しながら、必要な数分だけ拳圧を放った。
「がっ!?」
「ぐぇっ!!!???」
「いっ!?」
「おあっ!!??」
拳圧は彼らが認識できない速さで放たれ、誰一人反応出来ずに食らってしまい……内臓を破壊することはなかったが、全員肋骨に罅は入っていた。
「今の攻撃に反応出来ないんじゃ、そんな人数と実力で挑んでも本当に死んだ同期に再開するのがオチなんで、大人しくギルドの依頼でも受けててください」
さっさとこの場から去れと伝えると、ゼルートは宙を駆け……船には乗らず、空から捜索を始めた。
「えっ…………はっ!!!???」
当然、未だに腹に食らった拳圧のダメージに苦しむ若者たちは、宙を駆けるという行為を行うゼルートの姿に驚愕。
まさにお前たちとは違うんだと言わんばかりの捜索方法に……誰かが地面に思いっきり拳を叩きつけた。
「ゼルートにしてはやや厳しい言い方だったわね」
「そうかもしれないな。でも、優しく言ったところで……諭すように言ったところで大人しくしてくれないと思ったからな。結局拳で黙らせることになった訳だけど」
「相変わらず冒険者らしい、という話だな」
アレナはラルの背中に乗り、ゲイルとルウナは鳥獣系の魔物の姿に形を変えたラームの背に乗って移動。
話し合いで解決という手段を身に付けつつあったと思っていたアレナにとっては、リーダーが取った今回の行動はやや乱暴な解決に思えた。
「確かにらしいっちゃ、らしい解決方法だろうな。やれるなら話し合いでの解決が良いんだろうけど……なんか、あれだ。我儘で自分勝手、自分本位に動いてる連中だからか、そういう努力をするのが面倒に感じたんだよ」
リーダーの考えが解らなくもないため、アレナはそれ以上突っ掛かってきた若者たちとの一件については、口に出さなかった。
「ッ!!!!」
その直後、レーダーに反応を感知したゼルートは複数の風槍を数本を海中へ適当に乱射した。
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