冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

少年期［９３５］間違ってはいない

「そういえば、あいつらどうなったんだろうな」

地上へ帰還し、宿に戻って夕食を取りながらゼルートはぽつりと呟いた。

「なになに、やっぱりあの子たちのことが心配なの？」

「いや、心配ではない」

ニヤニヤ顔で問うたアレナに少々イラっとしながら、速攻で否定するゼルート。

「ただ、失敗したなら俺たちの番だなと思ってな」

「うむ、それはそうだな。まぁ、Bランクの魔物にCランクの魔物が多数であれば、失敗するのはほぼ確実だろう」

話に割って入ってきた彼らの実力を侮ってはいない。

しかし、ルウナの戦闘経験値も一流と言えるほど溜まっているため、鑑定のスキルなどなくともある程度解ってしまう。

彼らではよっぽどの策を有するか、特大ダメージを与えられる切り札がなければ非常に厳しい、というルウナの見解は間違っていない。

「そうね……何人か死んでてもおかしくないでしょうね」

そんな話をしていると、ゼルートたちが戻ってきたと耳にしたギルド職員が宿に訪れた。

「ぜ、ゼルートさん。も、戻ってきたんですね」

「……とりあえず、エールでも呑むか？」

ここで水と言わない辺り、ゼルートも着実に冒険者色に染まっていると言える。

「あっ、いえ。まだ仕事があるので……お水だけ、頂いても良いですか」

「あいよ」

店員に水を頼み、氷の魔力で冷やした水を手渡す。

「ありがとう、ございます。っ…………たはーーーー、はぁ、はぁ……その、ブルーシーサーペントに挑んだ彼らなんですが」

「何人か死んで逃げた、ってところですか？」

「あ、はい。そう。です……えっと、解ってたんですか？」

「解ってたというか、ある程度は予想出来てたって感じですね。まだ冒険者になってギリ二年いってないですけど、Cランク以上の魔物とそれなりに戦ってきたんで、Bランクの魔物がどれぐらい強いか、それなりに解ってます」

ゼルートは何も悪びれることはなく、淡々と己の感想を口にした。

「それで、人の実力をぱっと見である程度は解かる様になってきました。ブルーシーサーペント意外にも普通のシーサーペントが何体かいるってなると、彼らじゃ全滅はせずとも何人かは死ぬかと……Bランクは、そういう相手ですからね」

「その……いえ、なんでもありません」

ギルド職員は「そこまで解っていながら何故！！！」という言葉を言いかけ、ぐっと飲み込んだ。

元々ゼルートたちはブルーシーサーペントの討伐に乗り気だった。

そこに割り込んできたのは彼らであり、ゼルートたちが保険をかけなかったことは、決して悪くなければ卑怯でもなく、寧ろ彼らの勇気を評しての判断とも言える。

「それで、あいつらはちゃんと諦めてくれましたか」

「今のところ、続行する派と諦める派で別れています」

「実力差を知って素直に諦めるか、もしくは殺された仲間の為にも、なにがなんでも自分たちが倒す……らしい衝突だな」

「冒険者には良くありがちね。まっ、そういった感じで意見が分かれた場合、絶対に双方が納得した結果になることはないけど」

過去の観察から、アレナの言葉通りになるとギルド職員も予想出来る。

「つまり、もう俺たちが討伐に向かっても良いってことか」

「敵を討ちたいと思っている派の子たちが馬鹿な真似を起こさない内に、私たちで討伐した方が良いでしょうね」

ゼルートが彼らに対し、少々冷たい対応をしたことについて、特に文句はない。

しかし、後輩……同期ぐらいの同業者たちが無茶をすることに関して、どうしても心配に思ってしまうのがアレナという冒険者。

「という訳なんで、明日からブルーシーサーペントを討伐しに行きます」

「あ、ありがとうございます！！！！」

ギルド職員は深く頭を下げ、再びダッシュで仕事場へと戻って行った。

（……ギルド職員たちも色々と大変なんだな～）

疲れの一部がゼルートから自然と放たれていた圧だった……というのは、全く解っていなかった。