少年期[932]名声は要らないけども
海賊に苦しめられた次は、海に潜む魔物に苦しめられる。
悲しくも海の上から消えないループ。
陸地とは違い、海には基本的に魔物が近寄ってこない航路がない。
なので、どう頑張っても魔物に襲われる。
「実は、ここ最近商人たちの航路にブルーシーサーペントがうろついてるみたいで」
「ブルーシーサーペント?」
聞き覚えがない名前に首をかしげるゼルート。
「私も遭遇したことないけど、確か普通のシーサーペントと違って角があって、鱗が蒼い個体……だったかしら?」
「青じゃなくて蒼いのか」
「そうね。青じゃなくて蒼よ」
何を想像したのか、ゼルートは頭の中に浮かんだブルーシーサーペントにカッコ良さを感じ、無意識に口端を吊り上げていた。
「そのブルーシーサーペントを倒してくれってのが、ギルドからの依頼ということで良いですか」
「はい、その通りです。ブルーシーサーペントの周囲には通常のシーサーペントも多いのですが、よろしいでしょうか」
「えぇ、構いませんよ。その依頼、俺たちが受け「ちょっと待った!!!」っ?」
会話はギルド内で行われていたため、重要な依頼をギルドがゼルートたちに頼もうとしているのが丸分かり。
そんな空気を読まず、数組の冒険者パーティーが割って入る。
「えっと……なんだ?」
ゼルートだけではなく、アレナとルウナの視線も向けられ、割って入ってきた冒険者たちは少し後退るも、勇気を出して自分たちの思いを口に出した。
「その……俺たちにも、チャンスをくれ!!!! いや、ください!!!!」
空気が読めない、どうしようもない程のバカ……という訳ではなく、見た目ではその実力が解り辛いゼルートを前にして、敬語に変更。
「私たちにも、名を上げるチャンスをください。もっと正確に言うと、ゼルートさんたちはもう名を上げる功績を積むことが必要ない程の名声を持っているので、それらのチャンスは意欲のある他の若手に譲ってほしいのです」
「お、おぉう……ん~~~~」
キリっとした女性冒険者が本音をドバっと伝えられ、逆に少々圧されたゼルート。
(別に名声は欲しいと思ってないけど、若手にもチャンスを、ねぇ…………目の前の連中のことを考えると、それはそれでその考えが間違ってるとは思えないからな……難しいところだな)
ゼルートに「自分たちにもチャンスをくれ!!!」と頼んできた集団は、ほぼ全員Cランク。
二十を越えている者もいるが、比較的年齢は若い。
まだまだこれから成長する望みがあり、大きな功績を手に入れれば、上を目指せる。
「ゼルート。ブルーシーサーペントとかいう名前の良い戦いが出来そうな相手がいるのだろう。何故わざわざあいつらに譲る必要がある」
戦闘が一番の優先事項であるルウナにとって、いきなり話に入ってきて「自分たちにもチャンスをくれ!!」と頼んできた者たちの要望など、聞くに値しない。
倒したければ、ゼルートたちよりも先に動いて倒せば良いだろというスタンス。
そんなルウナの考えは、冒険者的に全く間違っていない。
「ルウナの考えを押す訳じゃないけど、あなた達では無理よ」
「「「「「ッ!!!!!」」」」」
アレナと歳が近い者もおり、口に出された言葉に怒りを覚える。
だが、それは見下すために口にした言葉ではない。
「上に登るためにチャンスが欲しいという気持ちは解るけど、それでも死んだらそこまでよ。敵はブルーシーサーペントだけじゃなくて、複数のシーサーペント……海に落ちるというだけで、死に危機が高まる。得たチャンスを利用して壁を乗り越えるにしても、死んだら次もクソもない……あなた達は、本当にそれを理解してるの?」
「俺たちは冒険者だ!!! 死ぬのを恐れて冒険してるんじゃねぇんだよ!!!!!」
勇気ある名言……と捉える者もいれば、本当の修羅場を知らない若造が粋がっているだけど思う者もいる。
二人としては多数の同業者たちが介入してくることに不満しかないが、決断を下すのはゼルート。
そのため、自然とリーダーに視線を向けて答えを求めた。
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