少年期[910]暴力的な差
(こんな場所にこんな奴がいたなんて、色んな場所に行ってみないと強者には出会えないもんだな)
天性の名刀使いとの出合いに感謝しながら、徐々に剣速を上げていく。
頭目がゼルートの斬撃を防いだのは、最初に一度のみ。
男は刀の全てを理解している訳ではないが、それでも形状から防ぐことには向いていない武器なのは理解している。
故に、ゼルートの動きを読むことに集中し、全力で斬撃を回避し続けていた。
(ん~~~……凄いとは思ってたけど、刀の扱いだけじゃなくて、戦闘センスも並じゃないな)
一対一の戦闘が始まってから、既に四分が経過。
その間にゲイルとラルはある程度楽しみ終えたため、戦っていた海賊たちを一人残らず潰し終えていた。
仲間が全員殺されたという事実を視界の端で確認済み。
それでも頭目はゼルートとの戦闘を諦めず、必死で食らいつく。
海賊であっても、戦闘者としての……強者としての意地がある?
そんな意外にも眠っていたプライドが目覚めた、などという話ではない。
頭目は単純に……運良く手に入れ、今では自分の愛刀として共に過ごす名刀、三日月の力を信頼している。
ランクは七と、ダンジョンの宝箱から手に入る武器であっても、中々手に入らないほどの代物。
付与されている属性は水であり、完成された抜刀は、海をも切断する。
この愛刀となら、自分はどこまでも強くなれる。
現在、頭目はそのような物語の主人公になったかの如く、この状況を諦めなければ突破できるという思いを持っていた。
四分という戦闘時間が経過しているが、まだ体力には余裕がある。
魔力も限界ギリギリまでは追い込まれておらず、自身の成長に使える余力がある……が、ここで天性の刀剣使いである頭目がどれだけ頑張っても、超えられない壁が存在する。
それは……レベル差による身体能力の暴力。
頭目の男は決して低くなく、元の戦闘スタイルから身体能力は同レベルの者たちと比べてもやや上。
戦闘者という枠で見ても、上の方に位置する。
しかし、年齢では頭目の方が上であっても……戦闘経験数だけは、絶対に超えられない壁が存在する。
その差が、圧倒的なレベル差を生み出した。
(こいつ! いったい、どれだけレベル高いんだよ!!)
魔法の腕が並ではないが、前衛で戦える十分な身体能力を持っている。
つまり、身体能力に関しては、後衛の様なひょろいものではない。
それだけは頭目でも解った。
ただ……自身の戦闘技術、三日月の扱いが上がっているにも関わらず、全く戦況を変えられない。
高い壁を、一ミリも登れている気がしない。
徐々に仕上がってきている斬撃が、掠りもしない。
紙一重で躱すしかない、もしくは防ぐしか選択肢がないという状況に、どうしても追い込めない。
「なん、なんだ! てめぇはよ!!!!」
「冒険者兼、貴族だよ!!!」
そういう事が聞きたい訳ではない。
そんなことは問われたゼルートも解っているが、目の前の海賊相手に対し、律儀に答える必要はなかった。
(この勝負の間に、徐々に刀を扱う腕が上がっている。まさか、海賊の頭目がここまでの強者だったとは……私に戦わせてくださいと進言するべきだったか)
(あの人間、思ったより粘りますね。ゼルート様相手にここまで戦い続けるなんて……それに、目に見えて戦闘中に成長してる。ゲイルなら、このまま延々と戦わせて限界まで成長させたいと思いそうね)
既に下っ端や幹部たちとの戦闘を終えたゲイルとラル。
ゲイルはラルが予想した通り、現在ゼルートと戦闘中の海賊が限界まで成長すれば……自分と同じレベルまで成長すれば、どれだけ心が躍る戦いができるだろうか!! と、戦闘狂が過ぎる考えをしていた。
そして遂に一対一のバトルが始まってから七分が経過。
ここにきてようやくゼルートが戦い方を変えた。
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