少年期[881]人間の方が厄介

同業者との会話で、もしかしたらという可能性を見出したゼルート。


しっかり休んで体力と精神を回復させ、翌日……再度街の外に怪しい連中はいないか、捜索を始めた。


「高位のアンデットじゃなく、人間がモンスターをゾンビ化、ねぇ……あり得ない話ではないけど、どちらかといえばそっちの方が面倒ね」


休息日の夕食時、ゼルートは同業者たちの会話から得た情報を二人に伝えた。


ルウナは、魔物であろうと人間であろうと変わらないと思っているが、アレナは考えが違った。


「結局はぶちのめせば、全て終わりではないのか?」


「相変わらずの脳筋発言ね。確かにぶちのめせば終わりだとは思うけど、完全に面倒な芽を潰せるかはまた別問題よ」


「……つまり、今回モンスターをゾンビ化させた連中は、何かしらの組織に属する末端構成員がやったってことか」


「可能性としてだけど、ない話じゃないと思うの」


これまた歴史を振り返れば、アレナの話は絶対にあり得ないと断言は出来ない。


(アイスタイガーやスノードラゴンを討伐出来て、ゾンビ化まで出来る組織、か……それはちょっと面倒という厄介というか、放っておけないな)


戦力的に考えれば、中堅の上位から、トップクラスの中盤ぐらいのクラン程の戦力を有していることになる。

そんな力を持つ者たちが、組織の中心ではないとなれば……怪物ゼルートも少々焦る。


「そうなってくると、やっぱり速いとか探し出して潰さないとな」


「人間があれを倒した、か……ふふ、燃えてくれるじゃないか」


「今回は、私も暴れて良さそうですね」


戦闘大好き組は非常にテンションが上がっているが、常識人であるアレナにとっては、頭が痛い出来事。


(こういうのって、仮に組織のアジトを突き止めても、一旦ギルドに話を持ち帰るべきよね……絶対に止まってくれなさそうだけど)


三人の表情を見る限り、戦る気満々。

ラームとラルも、それなりに戦闘欲が高まっていた。


そんな仲間たちの様子を見て、諦めて覚悟を決めるしかないと思ったアレナ。


(正直、ギルドに話を持ち帰ったところで、って話よね)


ホルーエンに属する冒険者たちや、領主の騎士や兵士たちのレベルはトップクラスと比べれば程遠く、仮に大量の戦力を投入しようものなら、絶対に無駄死にする者が増える。


そういった事情を考えると、やはりゼルートたちだけで攻めるのがベストな判断と言える。



「……やっぱ、そう簡単には見つからないか」


探索を始めてから約五時間後。

軽く走りながら探索しているが、未だにそれらしき場所は発見出来ないなかった。


前回と違い、地中を意識しながら探索している。

六人中、四人が地中に意識を向けているので、走りながら移動していても、異変を見逃すことはない。


「でも、良い探し方だと思うわ。地中の方が居場所がバレにくい。前回は普通に探せば見つかる場所を探した。今回みたいに別の場所を意識しながら探せば、いずれ見つかる筈よ」


地中にそれらしき場所が見つからなければ、もはや隠れ場所はない。


亜空間の中にでも隠れる?

一般的には不可能。

一般的ではない人物が行おうにも、不可能に近い。


「そうだぞ、ゼルート。あまり落ち込むことはない」


仲間の言葉に励まされ、少し元気が出たゼルート。


そして更に二時間後…………そろそろ一旦街に戻ろうかと考え始めた頃、ルウナが異変に気付いた。


「……変だな」


「どうしたんだ、ルウナ」


「この辺りだけ、やけに人の匂いが多い」


周囲の環境上、あまり嗅覚が使えない中、ルウナは筈かな違いを察知。


ラームとラルも意識して調べた結果、ルウナと同じく複数の人間の匂いを感じ取った。


「マジか。ってなると、この辺りの地中が怪しいってことだよな」


しかし、地中を意識して気配感知を使っても、何も気配は感じ取れなかった。


感じ取れなかったが……ルウナたちと同じく、僅かな異変に気付いた。

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