少年期[878]目の前にいるのは?

ゾンビスノードラゴンは無事に討伐を終え、死体を回収。


その討伐を終えた後、ゼルートたちは直ぐにホルーエンへ戻った。


「これを視てほしい」


冒険者ギルドに到着後、狩った魔物の死体を解体場に出し、同時にゾンビスノードラゴンの一部を視てもらった。


「こ、これは!!??」


「分かりますか」


「え、えぇ。勿論です……ただ、その、驚きのあまり上手く言葉が……出てきません」


「俺たちもこいつと遭遇した時は同じ気持ちでしたよ」


かなり昔の話ではあるが、ホルーエンに滞在していた冒険者パーティーが、スノードラゴンを討伐して死体を持ち帰ったという記録は残っている。


しかし、目の前に出されたスノードラゴンの一部は、ゾンビ化している。


鑑定のスキルを持つ者であれば、その違いを見分けるのは造作もない。

ただ……目の前の素材に、驚かずにはいられない。

頭の中には「何故?」という単語が大量に溢れていた。


「追加で悪い情報を伝えますが、ゾンビ化したアイスタイガーとも遭遇しました」


「っ!!??」


まさかの情報に、受付嬢は倒れそうになったが、解体士がキャッチ。


「ありがとうございます……その、それは本当ですか?」


「本当です。その、遺体はラームに食べさせたので残っていませんが、遭遇したのは本当です」


「「っ??」」


ゼルートの言葉にはてなマークを浮かべる受付嬢と解体士。


何を言っているのか分らない……が、ゼルートの従魔であるラームが、普通のスライムではないという報告は受けているので、無理矢理その事実を飲み込むしかなかった。


「わ、分かりました。ゼルートさんたちの報告ですし、是非とも上に報告させていただきます。ですが、そうなってくると……」


「アイスタイガー、ゾンビスノードラゴンを倒した存在について、ですよね」


「はい、その通りです」


BランクとAランクの差はあれど、容易に倒せる相手ではない。


受付嬢も倒した魔物を呼びが得らせる力を持つ個体は、高位のアンデットだという結論に至った。

それと同時に、そんなアンデットが一体でアイスタイガーやゾンビスノードラゴンを倒せるのか? という考えにも至り……頭の中がラームに対する疑問から絶望に埋め変わった。


「……いったい、どんな魔物が……」


解体士にも受付嬢が感じた絶望が伝わってくる。

ただ、ふと思い出した。


自分たちの目の前にいるのは……誰だ?


「なぁ、あんたらなら……そのヤバいアンデットがいても、倒せるか」


「アンデットってなると、悪獣とは戦闘スタイルが違うでしょうね。自分以外の戦力も用意してるでしょうから、そっちの半分策として……まっ、大丈夫だとは思いますよ」


そう、目の前にいる少年は戦争を終わらせ、自国を勝利に導いた小さな英雄、覇王戦鬼。

加えて、過去にSランク魔物の悪獣を一人で倒したという功績も持っている。


その事実を思い出し……絶望に埋め尽くされていた受付嬢の心に、希望の光が差し込んだ。


「とりあえず、上に報告しといてくださいね」


「は、はい! 分かりました!!!」


受付嬢の表情に生気が戻り、直ぐに生類を作成し、上司に提出。

書類を受け取った上司は目玉が飛び出そうになったが、直ぐにゾンビスノードラゴンを倒した者の詳細を把握し、ホッと一安心。


この情報はホルーエンを治める領主にも伝わり、ゼルートという今最高に熱い冒険者がいる。

その冒険者とパーティーメンバーが、その問題を解決しようとしてくれていると分り、卒倒することはなかった。


ただ……領主としては、まだ頭が痛すぎる問題が残っている。


ここ最近、街の住人が忽然と行方不明になっている。

この一件に関しては、全く調査が進んでいない。


領主が手を抜いている?

そんなことはなく、寧ろ解決に尽力を尽くしている……ちょっぴり頭皮が剥げてきているのが分らない程、迅速に解決しようと動いていた。

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