少年期[876]乗り気しない

街で行方不明者の数が一人……また一人と増え始めてから約二週間後、ゼルートたちは珍しい魔物と遭遇していた。


「マジか……そんなことある?」


「普通はないわね」


「私もないと思う」


三人の意見は同じであり、視線の先に腐ったアイスタイガーがいた。


アイスタイガー自体はBランクのも魔物ということで、一般の冒険者たちからは恐れられる存在。

出来れば遭遇したくない強敵。


そんなアイスタイガーの体が……所々腐っている。

体の中のグロい部分がちょいちょい見えているが、それでも生きており、ゼルートたちの方に意識を向けている。


「誰が戦う?」


「私は遠慮するわ」


「…………私も、今回は遠慮しよう」


アレナはいつも通りの答え。

しかしBランクの魔物を相手に、ルウナが珍しく戦闘を遠慮した。


普段であれば、嬉々として戦闘を挑む。


「珍しいな、ルウナ」


「いや、なんというか……うん、あまり気乗りしない」


そうこう話してる内に、アイスタイガー改め、ゾンビアイスタイガーがゼルートたちを敵と認識、襲い掛かってきた。


(確かに、こう……ゾンビ系の魔物って、あまり気乗りしないよな)


二人の気持ちは解らなくもない。


誰がゾンビアイスタイガーの相手をするか悩んでいると、ラームが名乗り出た。


「皆が戦らないなら、僕が戦っても良い?」


「おっ、良いのか? それじゃ、頼むぜラーム!」


「うん!!! いっくよ~~~!!!」


ラームが引き受けてくれたお陰で、三人は一安心。


「しかし、ゾンビ系の魔物がいるなんてな……結構久しぶりに見たな」


初めて遭遇したわけではないが、遭遇回数は非常に少ない。


それはゼルートよりも戦闘経験豊富なアレナも同じだった。


「私もよ。でも、本当になんでこんなところにいるのかしら」


「近くにアンデット系の魔物でもいるのか?」


ルウナの言葉通りの状況であれば、目の前にゾンビアイスタイガーが現れたのも納得。


ただ、仮にそういった状況であれば、かなりの高位アンデットが近くにいることになる。


「アイスタイガーを蘇らせるアンデット、ねぇ……あまりそんな奴がいるなんて、考えたくないわね」


高位でないアンデットがアイスタイガーをゾンビとして復活させようとすれば、かなり機能が低下してしまい、せいぜいCランク程度の戦闘力まで下がる。


しかし、現在ラームと戦っているゾンビアイスタイガーは、体の中身が少々減っている分、スピードが上がっていっる。

アイスタイガーとの戦闘経験があるアレナからすれば、普通に強化されている個体といった認識。


「アンデット系の魔物のか。まぁ、俺らが得意な相手って訳ではないか」


ゲイルたちを含めて、魔法が一番得意なのはゼルートだが、光魔法は聖魔法が特別得意ではない。


光魔法や聖魔法に弱いという大きな弱点を持っているが、それらの属性魔法を習得している魔法職は多くなく、結局なところ厄介なモンスターであることに変わりはない。


「でも、どれだけ強くてもAランクぐらいだろ。それなら、俺たちで十分倒せるだろ」


「そのアンデットの周囲に何もいなければ、ね」


「…………」


アレナの有難いお言葉に、ゼルートは言葉が詰まった。


確かに、死者をゾンビとして蘇らせることが出来る魔物が、周囲に一体も護衛を置いていないとは考えられない。


「そろそろ終わりそうだな」


ラームはゾンビアイスタイガーと十分戯れ、終わらせるにかかる。


自身の触手に複数の属性魔力を纏い、何分割にも切断した。

生前よりもスピードが上がったアイスタイガーだったが、職種は一本ではなく、十本以上あったため、逃げ切れる道筋が見えず、一瞬フリーズしてしまった。


「ねぇ、ゼルート! こいつ食べちゃっても良い?」


「食べちゃって良いぞ」


Bランクの魔物ではあるが、大半がボロボロになっているところを見ると、あまり価値は感じられなかった。


「っ!? アレナ、お前の言う通りだな」


「なに、が……はぁ~~~、そうね」


若干雪が強くなり始めたところで、そう遠くない場所に大きな気配を感じ取ってしまった。

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