少年期[869]そこまでは抜き取れないが……

「本当に強かったよ。いや、マジで。書類に書いてあった実績通りの強さ……違うな。実績よりも上の実力があったよ」


「……」


ゼルートとサリハンの超速バトルが始まってから二分後、サリハンの四肢は切断されており、雷の魔力で体が動かない状態になっていた。


「個人的には、冒険者として活動していればって思うけど、そういうのは考えるだけ無駄なんだろうなって、この頃よく思うよ」


一仕事を終えた表情をするゼルートに……サリハンは過去一の恐怖を感じた。


(これが、戦争を一人で終わらせることが出来る、怪物)


サリハンとて、戦闘の才はあれど、最初から最強の暗殺者だったわけではない。

奇襲に失敗し、実力者を相手にバチバチに戦ったこともある。


潜り抜けてきた修羅場は、楽なものばかりではない。


本当の意味で自分は最強ではないと解っていたが、結果……ゼルートを相手に何も出来なかった。

持っている手札を全て切ったが、掠り傷すら負わせられなかった。

そして体を麻痺させられ、口内に仕込んでいる毒で自殺することも出来ない。


(……アンロックしてなきゃ、結構ヤバかったな)


ゼルートの体感では、戦争の最後に殺りあったローレンス・ディスパディアよりも、戦闘力や対人戦の技術、手札の数なども含めて上。


どんな手札が飛び出してくるか分からない。

あらゆる攻撃を想定しながら動いていたからこそ、サリハンはゼルートに掠り傷すら与えられなかった。


言い換えれば、サリハンにはゼルートにそこまで警戒させる程の実力を有していた。


「さて、俺としては依頼人の名前とか教えてくれたら嬉しいんだけど……まっ、その気はないよな」


自決用に、口内に毒を仕込んでいることは把握済み。

何をされても、絶対に口を割らないタイプ。


プライドや誇りを割るのは難しい。

ただ……創造のスキルを持つゼルートには、拷問に頼らずとも情報を引き出すことが可能。


「気持ち悪くなるぞ」


「?」


ゼルートはサリハンの記憶に侵入し、情報を引き抜いた。


(妥当と言えば妥当か。戦争だからって割り切れるものじゃないし、差し向けられるのは仕方ない、か……)


サリハンにゼルート抹殺を依頼した人物は、ローレンスの関係者。

ゼルートがディスタールとの戦争時、最後に死合い……名刀、獅子王で斬り伏せた男。


「じゃあな」


情報の引き抜きに終了し、ゼルートはあっさりとサリハンを介錯。


死体は燃やし尽くし、遺品を回収。


「……はぁ~~~~。仕方ないのは解るけど、これ以上は勘弁してほしいな」


ゼルートがあサリハンから引き抜いた記憶には、二十代後半の騎士は最強クラスの暗殺者であるサリハンの前にいた。


その男の表情を見るだけで……再度、ローレンス・ディスパディアが慕われていたのかが解る。


(金額を考えれば、一介の騎士が支払える額じゃない。となれば、ディスパディア家の人間が金を用意したんだろうな)


引き抜いた記憶に登場する人物の記憶までは読めない。

だが、ローレンスが家族に慕われてないとは思えない。


「とりあえず、国王陛下に送る手紙を書くか」


サリハンの死体が灰となって消え、ゼルートは訓練場に消えかかっていた結界を解除。


従者に手紙と封筒が欲しいと頼み、国王陛下に向けての手紙を書き始める。

その後、ゲイルにサリハンの討伐終了を報告。


傍にはアレナやメリルもおり、二人はその報告を聞いてホッと一安心。


それからは通常運転で動き、自身の都合で伸ばした臨時教師期間が終了。

生徒たちから残って教師を続けてほしいと何度も言われたが、ゼルートたちはまだまだ現役の冒険者。


完全に育てる側になるのは早い。

生徒やイーサンたちとの宴会を終えた後、王城から手紙の返事が届いた。


内容は……国王陛下とのお茶会。

もしかしたら国王陛下と顔を合わせるかもしれないとは思っていたため、胃へのダメージは少々抑えられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る