少年期[866]友人なら気付く

「ゼルート、何か問題でもあったのか?」


「急にどうしたんだよ、ゴーラン」


昼食中、一緒に昼飯を食べていたゴーランがゼルートに尋ねた。


何かあったのかと。


「いや、朝からちょっと暗い顔をしてたからな」


「ゴーランの言う通りだね。もしかして、他の貴族とトラブルでも起こったのかい?」


ゼルートのほんの僅かな変化に、ゴーランだけではなくスレンも……リルとマーレルも気付いていた。


(そんなに表情に出てたか? それなりにポーカーフェイス出来てたと思うんだけどな)


本人が思っている通り、殆どの者は気付かない。

人の表情を読み取ることに長けている、慣れている者でなければ気付かない変化。


ゴーランたちの担任であるイーサンでも、いつもと少し違う……という違和感を感じた程度。


しかし、友人である四人は確実に先日までと何かが違う、何か深い問題を抱えていると確信していた。


「別にトラブルは起こしてないよ」


「そうか。まっ、お前なら他の貴族と問題を起こしても、力づくで解決するよな」


「分かってるじゃん」


食堂で会話が耳に入っている生徒たちの多くは、心の中でゼルートの言葉にツッコんでいたが、その言葉に嘘はない。


「ゼルート、あまり血を流すのは良くないよ」


「分かってるって。俺もなるべくそういうのは話し合いで解決しようとは思ってるよ。けどさ、貴族になった俺が言うのもあれだけど、こっちが冷静に話し合いで解決しようとしても納得せず、逆ギレするのが貴族だろ」


本当にゼルートが言葉にして良い内容ではないが、ゴーランたちには身に覚えがあって「そんな事はないと思うよ」とは言えない。


加えて、食堂には自身がそういった件を起こしてしまった過去を思い出し、体をプルプルと震わせて恥ずかしさを感じる生徒もいた。


「こんな事言うのはあれだけど、ゼルート君なら王族でも容赦しなさそうね」


「……まぁ、王族の方々が俺にバカなことを仕掛けることはないと思うぞ」


王族の中にゼルートへ好意的な者は多く、今のところ……王族と言う立場を利用して馬鹿な行動を起こそうと考える者はいない。


(お、王族の方にも容赦しないのは、否定しないのね)


マーレルはどこまで強気な態度を崩さないゼルートに、友人ながら本当に色んな意味で強いと思った。


「そ、それで、何を悩んでるの?」


「そんな大したことじゃないって」


本題に戻ろうとしたリルだが、ゼルートは四人に自分が抱えている問題を話すつもりはない。


「っ……私たちじゃ、力になれないの」


自分でも解りきった言葉を投げる。


学園に入学してから以前と比べて強くなったという自覚はあるが、相変わらず圧倒的な差がある。


「ん~~~~…………力になる、なれないの問題ではない、かな。俺が対応しないといけない問題なんだ」


リルの自分の力になりたいという思いは、素直に嬉しい。


だが、この問題に関しては関わらせる訳にはいかない。


「お前らだからって訳じゃない。アレナやルウナだって関わらせるつもりはない」


まさかの発言に、四人は交互に二人の顔を見るが……二人共仕方ない、といった表情をしている。


「ゼルートは、一度こう言ったら動かない男だ」


「何かあれば、その時は私たちの自己判断で動くだけよ」


今回の一件……二人は、ゼルートが一人だけでサリハンを潰すことに、口出しするつもりはない。


なので、今回自分たちが出来ることは……もしもの事を考え、ゴーランたち……加えて、ゼルートの姉であるレイリアの身を守ること。


レイリアはゼルートがレイリア専用にと造った錬金獣があるが、その錬金獣の最優先事項はレイリアを守る事。

その他の事態が起きた時を考えると、警戒しておくに越したことはない。


「……まっ、悪獣が十体も襲ってくるとか、デンジャラス過ぎる問題じゃないから、安心してくれ」


四人はゼルートの実力を信じるしかないと思い、それ以上は口を出さなかった。

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