少年期[865]手は借りない
裏の組織の男と別れ、屋敷に戻る。
シェフが用意してくれた夕食を食べ、広い風呂でゆったりを湯に浸かり、今日の疲れを癒す。
そして最高のベッドに戻ったゼルートは……ずっとサハリンを殺すことについて考えていた。
勿論、暗殺者に向ける殺気は抑えている。
屋敷の使用人たちの中には有事の際に戦える者も多いが、それでも先程うっかり漏らしてしまった様な殺気を再び漏らせば、何事かと慌てだす。
「ゼルート、ずっと難しい顔をしてるわね」
「当然だろ」
ゼルートは今も組織の男から受け取った書類に目を通していた。
(やっぱり、腕前は相当だな……Aランクの冒険者とか、実力があってもそうそう殺せる相手じゃないだろ)
実戦には相性が付き物だが、それでも冒険者のAランクといえば、戦闘者の中でも別格な存在。
腕利きの暗殺者であっても、殺すのは容易ではない。
「ふむ……私やアレナでは、力不足か?」
「ちょっとルウナ、もしかして戦う気なの!?」
冗談ではない!! といった怒りの表情が現れており、さすがのルウナも気圧される。
「あ、アレナ。落ち着け。本気ではない……ただ、ゼルートの重荷なってしまうのかと気になってしまってな」
「……そういうことね」
実際のところ、その様なある意味有名な戦闘者と戦いたいという思いはある。
しかし、ゼルートのパーティーメンバーとして、そこが不安に思う部分であるには違いない。
「私は、正直厳しいと思ってるわ」
ゼルートの奴隷……仲間になってから、確実にレベルが上がっている。
技術力も装備の質も上がっているのを考えれば、少し自信なさ過ぎでは? と思われるかもしれない。
しかし、アレナは過去に一流の暗殺者の力を体験していた。
当然だが、当時アレナが戦った暗殺者よりも、サハリンの実力は上。
ペーペーの暗殺者は殺す技術だけ持っていれば良いと考える者も多いが、プロは初っ端の奇襲が防がれることを前提に動く。
「安心しろ、二人を巻き込む気はない。貰った報告書を見る限り、狙っている人物にしか手を出さないみたいだしな」
それがサハリンのポリシーなのかどうかは解らない。
だが、その情報はゼルートにとって好都合だった。
「俺が仕留める。できれば証拠が欲しいところだが、他国の暗殺者だし……普通に考えれば、拠点はディスタール王国だよな」
さすがにそこまで行くのは面倒。
それでも……誰がそんな人物を自分に差し向けたのか、それだけは知りたい。
(プロの暗殺者なら色々と耐性は持ってるだろうけど……まぁ、そこはなんとかなるか)
色々とぶっ飛んでいるゼルートは、相手を物理的に沈める以外の実力も有している。
「そこはおいおい考えるとして……訓練場の強度を強化……いや、結界を何重にも張っておけば大丈夫か」
アレナが驚き、恐れるほどの相手。
そうなると……自分に付与している重力の枷を解錠しなければならないと判断。
身体能力は飛躍的に向上するが、そうなると……周囲が吹き飛ぶ。
初めは冒険者ギルドの訓練場を借りようかと思っていたゼルート。
しかし、よその訓練場より強度が遥かに高い訓練場であっても、最終的に所々吹き飛ばされる可能性が高い。
「ゼルート、その……本当に一人で殺るつもり?」
何だかんだで、もしもの事があれば参戦を惜しむ気持ちはないアレナ。
災害という点で考えると、Sランクの悪獣の方が強敵なのは間違いない。
しかし、人によっては超一流の暗殺者の方が倒すのに苦労する、と考える。
「あぁ、一人で殺るさ」
下手したら、技術力は向こうの方が上かもしれないという危機感はある。
だが、二人を巻き込みたくないという気持ちが強く、ゼルートはゲイルたちの力も借りないと決めていた。
(俺一人でこいつを……サハリンを殺したって話が向こうに伝われば、馬鹿なことを考える奴らが少しは減るだろ)
どうやって殺るかを決め終わっても、普段の様に数分で寝れる気がしない……そう思っていたゼルートだが、高級快眠ベッドは使用者の不安を和らげるかのように、夢の世界へといざなう。
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