少年期[862]一歩立ち止まれる奴が必要

「いや~~、マジで強かったぜ」


ゲイルと体格の良い男性教師と合流し、昼食タイム。


「バルク、ボロボロな状態なのに、随分と嬉しそうだね」


生徒から回復魔法を受け、ゲイルとの模擬戦で食らった傷は既に治っているが、それでも疲労は完全に消えていない。


「そりゃお前、久しぶりに闘争心が熱く燃え上がる戦いが出来たんだ。嬉しくなきゃ嘘だろ」


体格の良い男性教師、バルクの言葉にルウナは深く同意した。


「リザードマンの希少種と戦えることなんて、滅多にないからな。本当に良い経験になったぜ」


「確かに、滅多に体験できない貴重な経験にはなるだろうね」


「生徒たちもボロカスに倒してくれたしな」


少々言い過ぎかもしれないが、スレンたちのクラスと同様に、バルクが受け持つクラスの生徒たちは一対多数でゲイルとの模擬戦を行った。


一番初めに伝えられたバルクからの提案に、少々嘗められていると感じた生徒たちだが、本当に自分たちがクラス一丸となって挑まなければ掠り傷さえ与えられない相手だと解らされた。


「それは良いが、ちゃんと立ち直れたのかい?」


「そんな根性ナシは、うちのクラスに居ねぇよ。ところでよ、ゼルートはゲイルとどこで知り合ったんだ?」


特に隠す内容でもないので、ゼルートは当時の状況を軽く説明した。


すると、当たり前だがイーサンとバルクも思わず、食事の手を止めてしまった。


「それは……ちょっと、さすがに命知らず過ぎるんじゃねぇか?」


「同意見ですね。ゼルートさん、もう少し自分の命を大切にした方がよろしいかと」


「はは、気を付けます」


(もっと言ってやってください!!!)


アレナは二人に人生の先輩として、もっとその部分について注意してやってほしいと思った。


「でも、あれはバルクさんが言う、闘争心が燃え上がる戦いでしたよ」


「それはそうだろうな」


ゼルートがゲイルとバチバチに戦った時の年齢を聞いても、二人は「それはあり得ないだろ」とは思わなかった。

普通に考えればあり得ないが、十三歳という年齢でSランクの魔物をソロで倒している。


現時点での実力を考えると、今よりも幼い年齢の時にリザードマンの希少種を倒せても……ギリおかしくないと思えてしまう。


「まっ、こういうのばかり求めてる奴が一人ぐらいパーティーのいれば、パーティーの士気が下がることはないと思いますけど、一人は冷静な判断を下せる奴がいりますよね」


話題は生徒たちが卒業してからのパーティー編成に移る。


「イーサンさんのクラスで言えば、スレンみたいな奴ですかね」


「そうだね。彼も彼で熱い部分はあるけど、それ以上に冷静な頭で考える強さを持っている。冒険者として生活していく……というのを考えると、やはり一人はそういう者が必要だね」


卒業してしまえば、もう生徒たちにあれこれ言えなくなるため、教師としては是非とも卒業するまでに生徒たちの頭に刻み込みたい内容。


「そういうのは、俺が言ったところで説得力に欠けるんだよな~」


「私も同じだろうな」


「残念ながら、自分も無理でしょうね」


バルク、ルウナとゼルートは自身に説得力がないと自ら断言し、周囲の者たちもそれに同意。


「やっぱり、そこら辺はアレナが強く言うべきだな」


「別に良いけど……それって、リーダーであるゼルートの方が適任じゃないの?」


「世の中のリーダー、全員が冷静さを武器に戦って動く者じゃないだろ。俺は前に前に進むタイプだからな」


「……分かったわ」


強くともSランクの魔物にソロで挑む者を、冷静な思考が強いとは言えない。


残りの授業内容などについて話しながら昼食を食べ終え、午後も何かしらの問題が起こることなく終了。


放課後、生徒たちに捕まったゼルートは一時間程だけ生徒たちに付き合い、ようやく解放。

そして正門から出ると……とある男性から声を掛けられた。

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