少年期[851]ほぼドンピシャ?
(……良い環境が揃ってるな)
授業が始まる時間まで、ゼルートたちはイーサンに学園内の施設をある程度案内してもらい、充実した環境だという感想を持った。
(強くなれるか否かは生徒の才能にもよるけど、イーサンさんみたいな飛び抜けた実力を持つ人もチラホラいるし、強くなる環境としては文句なしだよな)
ここまで素晴らしい環境がありながら、強くなれないのは……それはもう、その生徒の落ち度では?
一瞬そう思ったゼルートだが、直ぐにそれは違うと思い、頭を横に振った。
(その方が強くなれるんだろうけど、それは俺が恵まれてるからそう思えるだけだったな)
前世と比べて、ゼルートはこの世界に転生してから圧倒的な量の訓練と実戦を積み重ねてきた。
前世の自分が見れば、アホなんじゃないかと口にするかもしれない。
ただ……それはゼルートが幼い頃から努力し続けた方が、絶対に強くなれるという思いを……考えを持っていたから、実践出来た。
大人達は幼い頃から頑張れと子供に伝えるが、それを中々理解出来ないのが子供。
それを思い出し、他人に押し付けるのは良くない考えだと、改めて頭に刻んだ。
「良い環境ですね」
「そう言ってもらえると、教師として嬉しい限りです……ところで、ゼルートさんはどのようにして、戦況を一人で変えてしまうほどの実力を身に着けましたか?」
先日、ルーキーたちがアレナとルウナに尋ねた質問と、殆ど同じ内容の質問。
イーサンに対して、二人は聞くだけ無駄ですよ……とは伝えなかった。
「……両親が二人とも優秀な冒険者なので、その血を引いているからというのもあると思いますけど、大きな理由としては……やっぱり、絶えず訓練と実戦を重ねたからかと思います」
「…………なるほど。修羅の道を辿った……ということですね」
適当にはぐらかされた、とは思わない。
ゼルートが過去に王城で開催されたパーティーでの出来事も知っている為、イーサンはある程度ゼルートが辿った道がどんな道なのか……ぼんやりとだが頭に浮かんだ。
「今思えば、馬鹿なことをしていたというか、命知らずだったと思います」
「ははは、それはどうでしょうか。私の勝手な見解ですが、ゼルートさんには幼いながら考える頭が備わっていたのだと思います。なので、傍から見れば無茶で命知らずな行動ばかりに思えるかもしれませんが、ゼルートさんとしては生き残れるという確信があったのではと思います」
かなり正確に言い当てられ、ゼルートの表情に小さくない驚きが浮かんだ。
(実力だけじゃなくて洞察力、考える力も高いな……この人、なんで教師なんてやってるんだ?)
年齢的にはベテランに差し掛かっているかもしれない。
しかし、ゼルートから視て……イーサンはもっと上を目指せる。
そんな印象を持った。
「それでは、少々お待ちください。私が合図をしたら、入室してください」
「分かりました」
既に生徒たちが席に座っている教室にイーサンが入り、ゼルートたちは少しの間待機。
「……なぁ、あの人かなり強いよな」
「えぇ、そうね。Bランクぐらいの実力は絶対に持ってるわ」
「私と戦闘スタイルが近い気がする……是非とも戦ってみたいな」
ルウナは真面目にイーサンの実力が優れている評価しており、戦ってみたい欲が溢れ出そうになっていた。
「ルウナ、一応俺たちは臨時教師としてここに来てるんだからな」
「それは解っている…………だが、生徒たちに見せる攻防のやり取りとして、私とイーサンが模擬戦を行うのはありだと思わないか」
「……頭使うようになったな」
ただイーサンと戦ってみたいだけじゃねぇか、とツッコみたくなる内容だが、全却下できるほど言葉に隙間がなかった。
「それでは、臨時教師の先生たちに入ってもらおう」
合図が教室から聞こえ、ゼルートたちは堂々とした態度で入室した。
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