少年期[847]野蛮かもしれないが
「ここに来る時は、いつも緊張するな」
ゼルートはアドルフ、ミーユと色々話した後日には、ゼブリックとのお話が待っていた。
勿論、呼ばれた場所は王城。
というより、丁度良い時間に王城から派遣された馬車は宿の前に到着し、王城まで案内された。
そして王城に到着してからは一人の騎士に案内され、とある一室に招待された。
「やぁ、この間ぶりだね。ゼルート」
「そうですね、ゼブリック様」
室内に待機しているメイドに促され、超高級ソファーに腰を下ろす。
(……屋根裏に何人かいるな。でも、俺に対しての警戒心はない、のか?)
ゼルートが勘付いているように、案内された一室の転移には王家が抱える裏の部隊の人間が待機している。
その者たちはゼルートを警戒しているのではなく、万が一ゼブリックとゼルートを襲撃しようとしてくる者たちを警戒している。
ゼルートに送られた手紙、そして今日のお茶会の情報は漏れていないが……万が一という展開になる可能性がゼロとは言えないので、裏の者たちを配備していた。
「改めて言わせてほしい。君のお陰で、多くの者たちが死なずに家族の元へ帰ることができた。本当にありがとう」
「光栄です……ただ、その……自分が派手に暴れたことで、内部から文句を言ってきた者はいませんでしたか?」
家族、友人知人の危機になる者はなるべく速攻で倒し、そもそも今回の戦争を早く終わらせようとした。
ゼブリックの言う通り、そのお陰で助かった命もある。
しかし……今回の戦争を利用し、自分の……令息の地位を高めようと考えている者もいた。
「ふふ、確かに今回の戦争で功績を上げて上にいこうと考えていた者もいただろう。今回の結果に関して、少々不満を持つ者もいたと思うが……あれだけ活躍したゼルートに対して、文句を言う愚か者は基本的にいないさ」
「そ、そうなんですね。それは良かったです」
ゼルートやその仲間たちのお陰でという部分はあるものの、ゼブリックの評価が下がることはなかった。
ゼブリックとしては最良の結果であり、その結果に文句などあるはずがない。
そこで文句を口に出そうものなら……ゼブリックと対峙する可能性がある。
よっぽど大馬鹿でなければその可能性に気付き、私利私欲にまみれた言葉を口にする事はない。
(実際のところ、文句がありそうな貴族はちらほらといたけど、ゼルートと敵対しようものなら、家ごと潰されるかもしれない。そのことは忘れていないのだろう)
昔の話だが、国王陛下の力もあり……子供同士の戦いの結果によって、三つの家が潰れた。
ゼルートが貴族界でも話題になり始めたことで、その話も度々話題に上がる。
「仮に君を潰そうとする者が現れても、ゼルートならなんとか出来るだろ」
「……武力で解決して良いのであれば」
「うん、それで良い。最低限、こちらが裁ける要素を残してくれていれば、それで良いよ」
ゼブリックの言葉を聞き、ゼルートは心底ありがたいと思った。
誰かと揉めた時、まずはなるべく話し合いで解決しよう。
そう思う様になり、昔と比べて少々大人になった。
しかし……本音を言えば、自分に不快感を与えてくる理不尽な相手は、物理的に潰したい。
野蛮な考えかもしれないが、そうしてしまった方が今後逆らって来ないだろうという考えもある。
「ところで、今後はどういった冒険をするんだい」
「戦争が終わったばかりなので、特にそこら辺は考えていなくて……一か月ぐらいはゆっくりしようと思ってます」
「そうなのか」
特に頼みがある訳ではない……が、ゼブリックはゼルートに雪原地帯に行ってみたらどうだと伝えた。
ゼブリックは雪原地域に生息するウィルッシュバニーというモンスターの肉の美味さが記憶に残っており、興味があればどうだと提案。
美味いモンスターの肉というのはゼルートの興味を引く内容であり、今後の選択肢に加わった。
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