少年期[831]疑われてしまう?

貴族になった時……新しい家名は何にしようか。


そんな事を考えながらあっという間に王都に到着。

まだ、直ぐに新しい家名を決定する必要はないが、それでもなるべく早めに決めたいと思ったゼルートは、両親と相談しながら何度も頭を悩ませる。


(……新しい俺の苗字になるんだよな。変な感じの苗字は嫌だし……かといって、平凡なのもな……はぁ~~、全然決まらない)


何日も新しい苗字について悩まされるゼルート。


そんなゼルートは現在……とある店へと訪れていた。

とある店とは、王都の高級衣服店。


なぜそんな店に訪れてるのか?

理由は、ゼルートの新しい服を新調するため……ではなく、アレナとルウナのドレスを用意するため。


ゼルートの服に関しては、以前オルディア王国の第三王女であるルミイル様と出会うために、早急に用意した正装がある。


ゼルートとしては非常に動きやすく、万が一の時にも衣服の破れなどを気にせず戦えるため、それなりに気に入っている。


「すいません、この二人に似合うドレスを用意してもらえますか」


「かしこまりました。お予算はどれぐらいでお考えですか」


「……特に気にせず、お願いします」


「か、畏まりました」


ゼルートの外見、一緒に行動している仲間の容姿もかなり知れわたっている為、店の従業員はゼルートの入店に対して難色を示さず、丁寧に対応する。


「ちょっとゼルート! あんまり高いのは必要ないのよ!!」


「……私としては、そもそも前に購入したあの正装で良いのだが」


「ダメに決まってるだろ、ルウナ。あとアレナ、こんなところでケチケチするのも良くないだろ」


仲間への返事を耳にし、従業員や同じフロアにいる貴族たちはなんて太っ腹な子供なのかと、心底感心していた。


「という訳で店員さん、二人に似合う良い感じのドレスをお願いします」


「かしこまりました!!!!」


服屋で働く店員として、お客様に似合う服を探すのが使命!! と考えている従業員も少なくなく、しかも……ドレスの購入額に上限がない。


加えて、素材である二人のレベルが高いこともあり……店員たちはテンションマックスだった。


(随分張り切ってくれてるな……購入額に上限はないって伝えたからか? まっ、どちらにしろ似合うドレスを選んでくれたらそれでオッケーだし)


しかし……ドレス選びが始まれば、ゼルートは非常に暇。

あまり服にも興味がないので、店内をうろちょろしていてもかなり暇。


(武器屋かマジックアイテムが売っている店でも行くか? でも、金は俺が払うんだし……決まった時に俺がいないと店側も困るよな)


そういう訳で、店内から外に出ることは止めた。


(当たり前だけど、店内にフードコート的なのはないんだよな……いや、文句を言っても仕方ない)


ごちゃごちゃと文句を連ねたところで、一瞬で時間が過ぎる訳ではない。

諦めてゼルートは店内に置かれている商品をじっくり観察し始めた。


ドレスや男性ものの正装や見た目だけを重視したアクセサリーなどには、あまり興味を持てない。

だが、巧が制作した一品となれば……見ていて多少、時間を潰す鑑賞にはなる。


(そういえば、クライレット兄さんやレイリア姉さんの錬金獣を造って以来、錬金獣は造ってないな)


二人の錬金獣を造り終えてから……ぶっちゃけあまり時間は経っていない。

とはいえ、それまでも錬金獣に関しては冒険者になってから造っていない。


(前回のダンジョン探索で一杯素材は手に入ったんだし、何か造ってみようかな……でも、俺が冒険者として使うことはまずないしな)


ゼルートが自分で造っても、自分の為に使うことはない。

全然あり得そうな話……であれば、造ってしまった錬金獣は全てガレンに渡す?


そんなことすれば、兵士や騎士たちの仕事を思いっきり奪うことになる。


なにより……あまりやり過ぎれば、国家転覆を図っているのでは疑われかねない。


(……何か、新しいマジックアイテムのアイデアでも考えるか)


プラプラと店内を歩きながら時間を潰し、二人のドレスが決定するまで数時間かかった。

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