少年期[823]心からの賞賛
「居合・瞬閃」
「…………およば、ぬ、か……」
ゼルートはローレンスが動くタイミングなど関係無しに、疾風迅雷と同時に……刀術スキルによる技、居合・瞬閃を発動。
ゼルートの疾風迅雷による速度強化に加え、居合・瞬閃の利用時に使用者の行動速度アップが追加される。
そこに更に!!! 身体強化までも行い、ゼルートは超速スピードでローレンスの横を通り抜け、胴体斬り落とした。
「あなたの気迫は、最後まで本物だった」
一瞬で勝負を終わらせたゼルートは、心からの賞賛をローレンスに送った。
「…………嘘、だろ」
「あの、ローレンスが……」
あまりにも一瞬過ぎた勝負に、ディスタール王国の者たちはしばし時間が経つまで、ローレンスが真っ二つに斬られたという現実を理解出来ないでいた。
だが、斬られた上半身が地面に落ち、下半身もゆっくりと倒れた。
そうなれば……もう、最後の砦が打ち砕かれたのだと、認めるしかない。
「さて……」
サッと血を払い、獅子王を鞘に納めるゼルート。
そして周囲に目を向け……獅子王をアイテムリングにしまうと、フロストグレイブを取り出した。
「ローレンスとの一騎打ち……俺が勝った。これで俺がそちらの王子様を拘束して自軍に連れて帰れば終わりなんだが……今からでも俺を殺したい奴は、襲い掛かってきても構わないぞ」
ローレンスを殺した後、自分に対して先程まではなかった類の視線を向けられていることに気付いた。
その正体は、ローレンスのことを慕っている騎士たちのものだった。
ゼルートにとっては、ささっとフルオン・ディスタールに降伏宣言をさせて、戦争を終わらせても良かった。
だが、後々面倒な輩に絡まれても面倒だと思い、約束を破っても構わないと伝えた。
すると……二名の騎士だけが、涙を流しながら全ての力を開放し、ゼルートに斬りかかる。
「ウォォォオオオオアアアアアアッ!!!!!」
「ゼェェアアアアアアアアッ!!!!!」
手に持つ魔剣に全魔力を纏い、剣技スキルの技を発動。
怒りの針が振り切れていることもあり、その一撃は二人にとってまさに最凶の一撃。
「氷魔一閃」
そんな騎士二人の攻撃に対し、ゼルートは先程の戦闘と同じく、一太刀で戦闘を終わらせた。
「……さて、他にはいないか?」
憤怒に満ちた上位騎士が一瞬で倒され、もうディスタール王国の王子、その周囲に立つ者たちは挑む心が完全に打ち砕かれた。
「冒険者、ゼルートよ……降伏する」
「了承した」
総大将が敵の冒険者に対し、降伏すると口にした。
それを耳にし、側近の者が白煙を上空に飛ばす。
そして拡声機能が付与されたマジックアイテムを使い、戦場に向かってディスタール王国がオルディア王国に降伏したことを伝えた。
この結果に、戦争に参加した者たちは……あまり驚いていなかった。
オルディア王国側のトップ陣たちは、ゼルートやその仲間の強さを理解しており、一般兵士や騎士、冒険者たちも戦争が始まってからのゼルートたちの暴れっぷりを見て、戦争は早々に終わると予感していた。
ディスタール王国の者たちも、あまりにも自国の兵士や騎士、冒険者が潰される速度が早過ぎた。
なので、戦争が一時間も過ぎれば……夕方前には自分たちの負けで戦争が終わると予感し、戦意喪失しかけていた。
「一応、縄だけ付けさせてもらいますよ」
「あぁ」
ゼルートはダンジョンの宝箱から手に入れた丈夫な縄でディスタール王国の第三王子、フルオンを拘束。
縄の知識なんてないゼルートだが、縄がマジックアイテムだったこともあり、自動でフルオンを縛った。
そして縛ったフルオンを肩に担ぎ、ゼルートは上空を風の魔力を利用して駆ける。
五時間もかからず終了した戦場の上空を横断し、自国のトップ陣が構えるテント前へと到着。
「お待たせしました、ゼブリック様」
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