少年期[814]暇、と言えるのか?

クライレットが一人で戦っていれば、当然他三人は一緒に纏まって敵を倒す。


クライレットが一人で行動してバルガスたち三人だけで連携という流れは、四人にとってそこまで珍しくない。

なので敵国の兵士や冒険者に対し、慌てることなくいつも通りの流れで殲滅していく。


「おぅらああ!! まだまだ、いけるぜ!!!」


虎人族のバルガスは優れた力と瞬発力を活かし、敵を斬り殺す。

もしくは体術でぶん殴る。


「そうは、させないよ!!」


人族とドワーフのハーフであるフローラは見た目からは想像つかない腕力で大斧を振り回し、仲間を狙う敵の攻撃を弾き飛ばし、ドカンと一発かます。

飛んでくる攻撃魔法も勢い良く弾き、その際に生まれた隙はバルガスがフォローする。


「二人とも、あまり離れすぎないでね」


エルフのペトラは冷静に戦況を把握し、弓矢で二人をサポート。

もしくは遠距離から二人を狙っている敵を狙撃。

狙撃の際には風の魔力が矢に纏われており、簡単には防げない。


緊急時にはクライレットの代わりに指揮を務める力があり、サポートを行いながら、声を出して周囲の状況をバルガスとフローラに伝える。


二人も割と周りが見えているタイプだが、それでも限界がある。

そんな二人にとって、ペトラから伝えられる情報は非常に助かる。


(クライレットは……相変わらずの上手さね)


リーダーにもしもの事が起きたらと思い、偶にチラッとそちらの戦況も見ているが、全く危なげなく生徒たちに近寄ろうとする敵を次々に撃破していた。


(私も驚く魔力の量と、バルガスもビックリのスタミナ。そしてフローラが褒めちぎる腕力……心配する必要はなさそうね)


冒険者になってから乱戦に遭遇することが多くなり、クライレットは学生の頃と比べて戦況を瞬時に判断し行動する速さが確実に上がっていた。


(前の方も盛り上がっているが……こちらにも持続的に敵がやってくる。油断はできないな)


後輩たちを、妹を守るためにお兄ちゃんは呼吸を整え、もう一度気合を入れて敵の首を斬り飛ばし、魔法をぶっ放す。



「……はぁ~~~。ちょっと暇ね」


その頃、後方では戦争に参加を希望した王都の学生たちが冒険者に守られ……少々退屈していた。

勿論退屈と感じているのはクライレットの妹であり、ゼルートの姉であるレイリア。


「れ、レイリア。それはちょっと不謹慎というか、不吉な発言じゃないか?」


「うっ……でも仕方ないじゃない。クライレット兄さんが……先輩たちが頑張ってて、ちっともこっちに敵が来ないんだから」


そんなことはない。


いくらクライレットたちが頑張っていても、全ての敵を跳ねのけ、潰すことは出来ない。

偶に何人か兵士や冒険者が抜けてくることがあるが、レイリアが速攻で潰してしまう。


「敵が来ないって……いったい何人潰したよ」


「……六人ぐらいかしら?」


戦場で人を殺した。

最初の一人目こそ、嫌な何かが両肩に重くのしかかり、吐きそうになった。


しかしレイリアはそこでぐっと堪え、見事に耐えた。

そこからは敵を殺すたびに罪悪感やら言葉にできない重みやらに潰されることなく、じゃんじゃん魔法を撃って護衛たちを突破した輩を倒した。


「そんな事言いながら、あんたたちだってがっつり倒してるじゃない」


「いくらレイリアが強いって言っても、お前だけに任せるわけにはいかないだろ」


「その通りよ。何のために戦争に参加したのかって話になるじゃない」


レイリアがいつも絡んでいる面子たちは、プライベートでもレイリアの特訓に付き合ったりしているので、既に冒険者のルーキーたちより対人戦での実力は上。


攻撃魔法も使えるので、突破してきた輩ぐらいはなんとか潰せる。


「頼りになるわね~~……でも、ここまで暇だと、やっぱりもう少し動きたいのよね」


そう言いながらレイリアは宙に数本のファイヤーランス……を、圧縮したバージョンを展開した。

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