少年期[794]しっかり成長している
「な、なんだよそれ!!!???」
魔法使いとは、パーティーの中で常に後方に位置し……クールに状況を判断しながら戦わなければならず、時には司令塔の様な役割を果たさなければいけない。
戦場と言えど、その役割は重要なのだが……そんな事を全て忘れてしまうぐらい、その魔法使いは目の前で起こった現象を直ぐには信じられず、絶叫した。
(ふむ、これは少しびっくりだな)
ルウナ本人もこうなるかもしれないと考えながら行った行動だが、あっさりグレートフレイルを破壊出来たことに、少なからず驚きを感じていた。
だが、現在ルウナが使っている武器、アルバラスはランク七の対刃剣。
これくらいのことは朝飯前。
グレートフレイルを使った魔法使いは少々危険だと思って風刃を強めに飛ばすと、間の敵をあっさり切り裂きながら魔法使いに激突。
身に着けていたマジックアイテムのお陰で速攻死ぬことはなかったが、いますぐそれなりのポーションを飲まなければヤバいといった状態だった。
「アイスジャベリン!!!!!」
一難去ってまた一難。
今度は女性の魔法使いが遠距離からアイスランスの上位魔法、アイスジャベリンを放った……しかも数は二十を超える。
マジックアイテムのサポートがあれど、これは中々の凄技。
「氷か」
だが、ルウナとしては氷系の魔法は打ち破れるだろうと思い、対決心が疼く対象。
そのアイスジャベリンを見た時、ラームが自身も複数のアイスジャベリンを……もしくは相性が有利な火属性の魔法で相殺しようかと思っていた。
しかしルウナがやる気であるのを確認し、その間にルウナに攻撃が届かないように動くことに専念。
「炎狼拳!!!!!!」
戦争が始まってから全く火の魔力を使わず、風の魔力……攻撃ばかりを行っていたルウナだが、得意な魔法は風よりも火。
アルバラスを一瞬だけ手放し、右拳から放たれた炎狼は以前放たれた時よりも成長しており……多数のアイスジャベリンを意に返すことなく食らい尽くした。
「ッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
それだけで終わることはなく、そのまま多数のアイスジャベリンを一度に放った女性魔法使いの元へと駆け出す。
直撃だけは仲間の冒険者が防いだが、それでも決して少なくないダメージを与えた。
(……これも成長しているんだな)
以前より弱くなっているとは思わない。
ただ、自分の周囲は相変わらず凄さのレベルがヤバい。
強敵との戦いをなるべく避けるアレナだって、ふたを開ければきっちり仕事を遂行する力を持っている。
故に自分が多くの戦いを経験して成長しているのか……いまいち分かりずらかった。
「ルウナ、そろそろ大きいのが来そうだよ」
「大きいのというと……ふふ、大物が釣れたということか」
ルウナとラームが今まで相手をしてきた中で、Bランクの冒険者やBランク級の力を持った騎士などはいた。
だが、ルウナの身体能力とアルバラスの性能にマジックアイテムの恩恵、そしてラームの自由自在な攻撃とサポートのお陰で……いつものルウナなら「少しは楽しめそうな相手じゃないか」と感じる相手も、気付く前にさくっと戦闘不能にしていた。
「狼人族の女性と、スライムの体を持つ少年……なんとも奇天烈な組み合わせ」
「ルウナ」
「あぁ、分かってる……良い獲物が来たな」
二人の気持ちは同じだった。
現れた騎士の年齢は二十前半……もしくは二十手前かもしれない。
しかしその体から発せられるオーラは、間違いなくAランク冒険者クラスのもの。
そして今までの経験から、そのオーラが見せかけでないことが分る。
普段であれば敵のそのた大勢を絶望させるのだが……この状況でルウナとラームの闘志が萎えるなど、絶対にあり得ない。
ルウナはその闘争心に嘘を付かず、獰猛な笑みを浮かべながら駆け出した。
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