少年期[793]意外にも冷静に、淡々と
ゼルートとゲイル、アレナとラルが戦場で暴れている間……当然、ルウナとラームも同じく戦場で暴れていた。
「…………」
まだ戦争が始まり、大した時間は経っておらず……まだまだ序章といえる時間帯。
四人と同じく一気に最前線まで跳んだのは良いが、未だ心が躍る相手とは遭遇していない。
(少し強い……いや、強過ぎるか)
戦争である以上、使う武器のランクを落とすわけにはいかない。
故に、ルウナはゼルートから貰ったダンジョンの宝箱から得た武器である風の対刃剣、アルバラスを使っている。
装備すれば脚力が大幅に強化され、超スピードタイプのルウナにピッタリ。
一般兵やそこら辺の冒険者では一切止めることが出来ず、アルバラスによる攻撃をガードしても、刃が当たってしまえば………そのまま斬り裂いてしまう。
(防御無視の刃……使い手としては、これ以上無いぐらい気持ち良く戦えるな)
相手がハンマーで攻撃してこようが、大盾を使い……魔力を纏っていようとも、圧倒的な鋭利さで障害物を裂く。
今回の戦争では少し大人になり、敵対する相手を全て殺す必要はない。
アレナと同じく、良い感じに行動不能にすることに集中していた。
だが、そんな少し闘争心にブレーキをかける動きでも……ルウナの刃は的確に敵の命を斬り裂いていく。
アルバラスの切れ味が良過ぎるというのもあるが、少しでも魔力を使用すれば、刀身から斬撃が飛ぶ。
風の魔力のコントロール補助の効果まで付いているので、飛ばした斬撃を楽々コントロールすることも可能。
「よっ、ふんっ! はっ、えい!!!」
そんな淡々と敵の数を減らしていくルウナの後を追う様に、ラームが敵に攻撃していく。
自分に襲い掛かってくる敵は勿論、漏れなく潰すか殺す。
ただ、そんな自分の敵を減らすことよりも……ラームはルウナがギリ倒していない敵の始末に意識を集中させていた。
アルバラスによってズバッと体を斬り裂かれていても、それなりに高価なポーションを飲めば、失った血は戻らないが傷は癒える。
復活した敵が自分たちの味方を殺す可能性が十分にあるので、まだまだ色々と余裕があるラームは後始末に勤めていた。
「な、なんなんだよあのガキは!!」
「す、スライムなのか?」
「なんでも良いから、とにかく殺せぇええええ!!!!」
ラームはラルやゲイルと違い、人の姿をしながら腕や脚をスライムの形にして水弾や水刃を放ち、討伐している。
淡々と味方を殺していく狼人族の美女も恐ろしいが、止めを刺していくことに躊躇がないスライムの体を持つ子供というのも、傍から見れば非常に恐ろしい。
子供の顔や体を持っているが、体はスライムの様に柔軟。
その柔らかい体を活かし、敵の斬撃や拳、攻撃魔法をあっさりと躱す。
というより、ラームは水の攻撃をメインとして、正確無比な攻撃で自分を狙っている敵の急所を潰す。
なので……基本的に近づくよりも前に、屍の山が出来上がる。
であれば、二人の動きを一瞬でも良いから止めて……その隙に強力な攻撃を叩きこめばいいのでは?
そう考える者がいるかもしれない……というより、既に考えて実行した者はいた。
魔法やマジックアイテムを使って二人の動きを止めることは不可能ではない。
ただ、今のところ魔法や道具を使ったとしても、スピード的に二人の攻撃を止めることが出来ないのだ。
「どけぇええええええっ!!!!」
しかし被害を顧みない者は、ひそかに詠唱を完成させ……味方の被害を度外視して火魔法、グレートフレイルを発動。
簡単に言えば、巨大なファイヤーボール。
だが、ただの巨大火の玉ではなく火力はファイヤーボールの火にならず、対象に当れば中々消えない。
強力なだけではなく、厄介性も秘めた一撃。
「はっ!!!!」
しかし、そんな強力な一撃をルウナはアルバラスに魔力を込め、二つの刃から嵐の風玉を生み出し、グレートフレイルにぶつける。
嵐の風玉はそのままグレートフレイルの中に入り、まさに嵐のような勢いで中心部から爆発。
「……は?」
使用者も思わず間抜けな表情になってしまう様な方法でも打ち破った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます