少年期[786]人間ボーリング

「はい、終わり」


悪くない一撃ではあったが、ゼルートからすれば躱してカウンターを決める余裕が十分にある動き。


兵士長が軽々とやられ、その人物のことを知っていた者たちからは悲鳴や怒号が起こり……果敢にも、敵であるゼルートを倒そうと死に物狂いで襲い掛かる。


ただ、敵を早くぶっ潰そうと考えているゼルートにとって、敵の方からやって来てくれるのは非常に有難い。


ゼルートの傍で同じく二刀流で敵を斬り刻んでいくゲイルも、ある程度殺した者たちの知人達から恨みを買い……周囲の者たちが絶対に殺そうと躍起になっている。


「ふむ、その意気や良し!」


しかし生死の戦い……そして自分を全力で殺しに来る敵が多数いる状況。

どう考えてもゲイルの好みな状況であり……襲い掛かってくる敵たちを丁寧に斬り捨てていく。


「どけぇえええ!! その小僧は、俺がぶっ潰す!!!」


(おっ、巨人族の冒険者だな。実力は……だいたいCランクぐらいか)


大斧を両手に持ち、巨人族の冒険者が渾身の力でゼルートを叩き潰そうと襲い掛かるが、自分より圧倒的に縦も横も大きな相手を見て……とある攻撃を思い付いた。


「丁度良い玉になりそうだな」


巨人族の冒険者が大斧が届く距離には行ってくる前に、ゼルートはミスリルデフォルロッドの形を変形させ、男の脚を掴んだ。


「なん、だっ!!!???」


ゼルートを大斧でぶった斬ることしか考えていなかった巨人族の冒険者は、脚に絡みつくミスリルデフォルロッドへの反応が遅れ、気付けば宙にいた。


「よっ、こいしょ!!!!!」


「ぬああああああっ!!!???」


空中で何回転か回され、勢い良く味方がいる方向へ飛ばされた巨人族の冒険者。


ゼルートは男を投げる瞬間に、全身に魔力を纏わせた。

このおかげで巨人族の男はダメージを受けることはないが、ゼルートの腕力でぶん投げられた魔力を纏う巨人族の威力相当あり……何人もの兵士や冒険者を圧殺した。


「中々酷いことをしますね、ゼルート殿」


「そうか? 別に敵を投げて他の敵を殺すぐらい、普通だろ」


投げる前のゼルートの頭の中には、ヒ〇カが人の頭などを振り回す様子が浮かび上がり、咄嗟にそれと似たことを行った。


ゼルートが敵ということで言葉が荒い巨人族の男だが、値は優しい人物。

自分が味方を殺すための道具に使われたと知り、体をプルプルと震わせ……力の限り怒号を上げた後、再びゼルートに向かって全速力でダッシュ。


今度はミスリルデフォルロッドに捕まらない様に、怒りながらも頭は冷静な状態。

しかしここでゼルートは同じ手を使うのではない、氷魔法のアイスフロアを使用。


ゲイルの邪魔にならない範囲に展開し、敵の脚を奪う。

そこまで拘束力が高くはないが、それでもアイスフロアから抜け出すことを意識しなければ、抜け出すことが出来ない。


ゼルートが敵を殺すにはその時間さえあれば十分であり、敵の意識がそっちに向いた瞬間に強めの風刃を放つ。

横一閃に放ったため、超高速で屈まなければ胴体が上下におさらばしてしまう。


幾人かは助かったが、盾を構えていたタンクの防御すら斬り裂かれ、たった一太刀で多くの命を奪った。

勿論、その中には巨人族の冒険者も含まれている。

ここまで大勢の命を奪ったのは初めての機会ではあるが、ゼルートの心は全くブレていなかった。


敵は自分を殺そうと襲い掛かってくる。

そして自分も敵を殺すつもりで戦っている。

そこに情けは必要ないと思い、全く攻撃の手を緩めることはなく、次々と敵の騎士や兵士に冒険者を斬り裂いていく。


(……今のゼルート殿は、まさに鬼……鬼神だ)


ゼルートを殺そうと襲いに掛かる者の中には、当然早めに潰さなければ不味いと察知した実力者たちが対応しようとするが、ゼルートはいきなり飛んでくる強攻撃などにいちいち動揺することはなく、全て冷静に対処。


殆どの敵を一刀で処理していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る