少年期[762]そうなればつり合う?
(ッ!? 何やら寒気が……ヤバっ!!! 完全に忘れてた)
ゼルートは周囲からとてつもない嫉妬の感情を向けられている事に気付き、直ぐにその理由を把握。
(このまま話し続けるなら、場所を移動した方が良いな……うん、そうしよう!!)
現在、ゼルートの目の前には国宝級の美女が二人。
そして二人には及ばずとも、十分美女と呼べる容姿を持つ女性が二人いる。
ミーユやセフィーレの名に聞き覚えがある者は、自分たちでは到底お近づきになれない人物だと直ぐに把握。
二人の名を知る者であれば、当然ゼルートの噂も耳に入っている。
悔しくはあるが、自分たちにゼルートを妬む資格はない。
そう思い、潔く妬むだけ無駄だと引き下がる。
だが、諸々の事情を知らない男子や男性たちからすれば、血の涙が出るほど羨ましい光景だった。
特にこの場には冒険者だけではなく、貴族の令息たちが多い。
年頃の貴族の令息たちであれば、ミーユとセフィーレの名と姿は知っていて当然。
彼らにとってはまさに高嶺の華と呼ぶべき存在。
どれだけ必死に手を伸ばそうと足掻いても、絶対に届くことはないアイドルや女神……そんな彼女たちと仲良さげに話しているなんて許し難い!!!!
と、多くの令息たちは心の中で嫉妬の炎を燃やしていた。
ただ……あまりにも嫉妬に狂い過ぎてむやみに絡み、親し気に話している少年を侮辱したらどうなるか……よっぽど馬鹿でなければ想像が付く。
今のところ周囲にはそんなバカはおらず、ゼルートは大きなため息をつかずに済んでいた。
「えっと、ちょっと場所を変えないか」
「うむ、その方が良さそうだな。ならば、私のテントに来ると良い」
「あ、あぁ……分かった。ガンツ、じゃあな」
「おう」
視線だけで人を殺せそうな嫉妬が多数向けられている知人を見て、ガンツは心の中で合掌していた。
(そういえばゼルートのやつ、アゼレード家のご令嬢の護衛依頼を受けたことがあるって言ってたな。あの様子だと、随分仲良くなったみたいだな)
相性というものはあるが、あまり貴族の依頼主と冒険者があそこまで仲良くなることは少ない。
ましてや、セフィーレは自分のテントにゼルートを招き入れた。
それがどういう意味なのか……解らないセフィーレではない。
そしてそれは、周囲の令息たちやある程度知識がある冒険者も理解している。
故に、先程までと比べて憎悪の炎が一気に膨れ上がった……と、錯覚してもおかしくないのが現状。
(まさかゼルート……マジでセフィーレ嬢とゴールインするのか? てなる、アレナちゃんとルウナちゃんはどうなるんだ? セフィーレ嬢が正室で、二人が側室コースか?? いや、でもミーユ嬢もこう……ゼルートに親し気な様子だったよな)
ゼルートと一緒に居た時間はたった数日だが、それでもミーユはそこら辺の令息たちと比べて圧倒的にゼルートの方が人として優れていると……そして面白いと感じている。
(あいつ、このままいくとどうなるんだ? 冒険者が貴族の令嬢と結婚するのは……まぁ、可能性としてはゼロじゃないよな)
逆玉の輿というのは、例は少ないが決してゼロではない。
(でも公爵家のご令嬢だろ……親が許すか? あっ、そういえばゼルートって確か男爵家の令息だったか。それを考えれば可能性としては……それに、あいつが今回の戦争で大活躍すれば、勲章を貰ったり……もしかしなくても爵位を貰える可能性がある訳だよな)
ガンツの記憶にはゼルートがソロでSランクの生きる災害である悪獣を倒したという情報が残っている。
本来であれば、その功績だけで国から爵位を授与されてもおかしくない。
(どう考えても、あの功績だけで騎士の爵位は貰えるだろ……男爵家の令息じゃなくて、男爵家の当主って立場になれば、つり合いは取れる……のか?)
今ここでどれだけ考えても、終戦後の結果がどうなるかは分からない。
だが、ゼルートがこの先面倒なことに巻き込まれそうだという確信だけは持てた。
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