少年期[723]無知ではない?
「……冒険者の間ではそれなりに名が広まったみたいだけど、盗賊たちの間ではまだまだって感じなのかな」
実家に帰る途中、ゼルートはいつも通り盗賊たちに狙われた。
(ゲイルやラルがいるのに……ってのは考えるだけ無駄か)
道中は人の姿ではなく、普段通りの姿で歩いている。
ゼルートやアレナ、ルウナの三人だけであれば良い獲物に見えなくもないが、従魔であるゲイルたちが一緒に行動している。
この時点でゼルート的にはどう考えても、盗賊たちからして良い獲物ではないだろ。
そう思ってしまうのだが、そんなゼルートの考えなど盗賊たちには通用しない。
寧ろ繋がっている闇深い商人に売れば大金が入ると考えていた。
「少しぐらい情報が入っていても良い気がするけど、盗賊たちにはあまり新鮮な情報が入ってきてないのでしょうね」
「同感だな。単純に相手を視る目がないという風にも思えるが」
「そこら辺は……どうだろうな」
今回もいつも通り、一人も残さず全滅させたがBランク冒険者クラスの実力を持つ盗賊が四人いた。
(もしかしたら、本当にゲイルやラルがいても勝てるって思って襲ってきたのかもな)
それだけの戦力があれば、自分たち相手に強気になっていたのも解る。
だが、四人のBランククラスの盗賊が一対四の状態でゲイルやラルに襲い掛かったとしても勝てる可能性はゼロ。
三人にとっては丁度良い遊び相手程度の存在だった。
「なぁ、こいつとこいつと……あとこいつとこいつ。ちょっと強かったよな」
「ん~~~~……そうね。ほんの少ししか戦いぶりを見ていなかったから、あんまり断言は出来ないけど下っ端たちと比べれば強かった気がするわ」
「確かこいつは強かったぞ。実際に戦ったから間違いない」
ゼルートたちを道中で襲う時にいた一人と、アジトで待機していた三人の盗賊。
この四人は三人の眼から視てもそれなりに戦える部類に入っていた。
「ルウナがそういうなら、やっぱり結構やる相手だよな」
「ゼルートはあまり楽しんでなかったの?」
「まぁ、盗賊が相手だからさっさと殺すことに越したことはないからな」
強敵との戦いは楽しむ派だが、今回はなるべく早く実家に帰りたいという気持ちがある。
しかし襲ってきた盗賊を始末しても、アジトには残りの盗賊がいるので今後通ってき道を通る他の人たちのことを考え、闇魔法でサクッと吐かせてアジトにダッシュ。
そして六人であっさり潰した。
「それでさ、多分だけどこいつら懸賞金掛かってそうじゃない?」
「……その可能性はありそうね」
「ちゃんと討伐しましたって報告する為にもこいつらの首だけは持って行くか」
奇跡的に四人の頭は無事だったので、氷漬けにしてアイテムバッグの中に放り込んだ。
そしていつもどおり戦利品の回収を行い……その量に呆れた。
「それなりに強かったからある程度溜め込んでるとは思ってたけど……こいつら、アホみたいに溜め込んでたな」
三人が呆れるほど溜めこんでいたお宝をすべて回収し、人の姿をしたゲイルたちが違う部屋で換金されていた女性たちを連れてきた。
「ゲイル、重傷を負ってる人たちはいるか」
「いえ、いませんでした」
「分かった」
重傷を負っておらずとも、雑に扱われてところどころ怪我を負っているので一瞬で全て治癒。
先に回収したお宝の中から服や金。
戦える者もいたので、これからの生活の為に武器や防具を渡した。
これからを生きるためとはいえ、そこまで色々と渡された女性たちは戸惑う。
しかしそんな戸惑いなど関係無しにゼルートは必要な生活用品や金を渡し、一番近い街まで彼女たちをしっかり送り届けた。
「すいません、道中で盗賊と遭遇したんですけど、賞金首らしき奴らがいたんで見てもらっても良いですか」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
ゼルートが子供だからといって門兵は侮るような態度で接さず、門兵たちの休憩所へと案内。
そして鑑定スキル持ちの者いる前で四つの氷漬けにした生首を取り出した。
予想していた通り、四人は賞金首だった。
ゼルートはそれなりの大金を受け取り再び実家に向けて出発。
と、その前に一度だけドーウルスへと寄った。
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