少年期[716]見合う時がきたら

「はぁーーーーーー、食った食った。ごちそうさん!!!」


「……おう、そりゃ良かったわ」


ゼルートはオーラスの奢りということで、いったいその体にどうやって大量の飯が入ってるのか気になるほど、満腹になるまで食べまくった。


(全く、こいつどんだけ食べんねん。実力だけじゃなくて、食べる方も一級品ってことかいな)


ゼルートと会食をするということで、それなりに良い店を選んだ。

なので、自身が食べた分も合算する、かなりの金額が懐から飛んでいった。


だが、今回は銀獅子の皇にとって必要な会食ということで、料金は必要経費扱いとなる。


「ゼルート、戦争が始まる前までにはランクをCに上げ時や」


「なんでだ?」


「なんでって……戦争では暴れるんやろ。お前さんの実力なら無理矢理押し通すことは出来るかもしれへんけど、DランクよりCランクの方が話が通りやすいんや。それぐらいは解るやろ」


Dランクは冒険者としてルーキーという殻を呼ぶった状態。

ただ、大多数の冒険者から見ればDランクの若造はルーキーと大して変わらない。


そこからもう一段階越え、Cランクとなった者がようやく一人前として見られる。


「お前さんの功績ならCランクなんて跳び越えて、Bランク……Aランクぐらいでもおかしくないんやが、もしかしたら横から面倒な奴らが何か言ってくるかもしれへん。でもな、Cランクまでなら街のギルドマスターの権限で上げられる筈や」


「そうか……分かった。どっかのギルドマスターに頼んでおく」


「そうせい、そうせい。んじゃ、今度会う時は戦場やな」


「だな」


特にこれ以上交わす言葉はなく、二人はお互いの帰る場所に戻った。


(正直なところ、冒険者歴二年目でDランクは十分優秀な部類なんやけど……それじゃあ、貴族のお偉いさん達は文句言うやろうな)


クランハウスに戻る途中、オーラスは後もう少しで起こる戦争について考えていた。


(ただ、あの歳でランクがCであれば向こうもまずは話を聞こうってなるやろ……多分)


貴族の面倒な部分を知っているので、絶対に問題無いとは断言出来ない。


(見た目ってのは面倒やなぁ~~~。ゼルートの容姿やと、ランクが高くても侮られる可能性が高い……普通は冒険者としてランクを上げることに熱を燃やする年頃やのに、そこに熱中せぇへん理由がよう解るわ)


決して、ランクを上げようという気が全くゼロではない。

将来的には父と母と同じ、Aランクの冒険者になりたいという目標はある。

だがそれはいずれ叶える目標。


今すぐにでも叶えたい目標ではない。

身長や体格は少しずつ大きくなっているので、外見がランクに見合う段階まで成長した時にBランクやAランクになりたい。

それがゼルートの本音だった。


「さて……二人はどこにいるかな」


一端宿に戻ったが、二人ともいなかったのでもう一度宿を出ることにした。

そして二人……だけではなく、ゲイルたちもいなかったので計五人が何処にいるか考え……真っ先に思い付いたのは冒険者ギルドの訓練場だった。


(訓練場にいなかったら街の武器屋……もしくは日帰りでダンジョン探索? 五十一階層に降りて日帰りでってのは十分にあり得そうだな)


五十一階層まで降りれば、ルウナたちが戦ってそれなりに満足出来る相手がうろちょろしている。


さてさて五人はどこにいるのか。

訓練場にいなかったら適当に武器屋を回ろうと考えながらギルド内に入ると、中にいる職員や冒険者たちが最低一回はゼルートの方を見た。


(?? 何故俺の方を見た? もしかして……五人が訓練場でバチバチに戦ってるからか)


自分の予想が合ってるかどうか確かめたく、訓練場に向かう足が速足になる。


「おぉ~~~~……バチバチにやってるな」


訓練場の中心地にはラルだけ審判として立っており、残り四人が二対二でバチバチにやりあっていた。

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