少年期[694]扱いやすい一品

「それじゃ、ささっと開けるか」


手際良く解錠を終わらせ、まずはホーリーガルーダと複数のグリフォンを倒した際に手に入れた宝箱を開ける。


「ん? これはとりあえず聖魔石だよな」


宝箱には望みの品である聖魔石が入っていた。

大きさにしてロングソード二つ分を造れるほどの大きさ。


「やったな、アレナ。これでアレナの聖剣が造れる」


「えぇ、そうね……聖剣を持つに相応しい実力者にならないとね」


既にそれ相応の実力を身に付けてはいるが、周りが傑物ばかりということもあり、相変わらず謙虚なまま。


「他にももう一つ箱が入ってたんだが、これは……鍵が掛かっていないな」


ボス部屋の討伐報酬として手に入れた宝箱は、一度目に倒した時とサイズがかなり違っていた。

最初はもしかしたら入っている品が、聖魔石ではない。

もしくは、かなり大きな聖魔石が入っているのではと思っていたが、ゼルートたちの考えは見事に裏切られた。


「いったい何が入ってるんだろう、な……これはこれは」


宝箱の中に入っていたもう一つの宝箱を取り出し、早速開ける。

すると、中には持ち手が少々異なるが対刃剣が入っていた。


「どう考えても一目で一級品だと解るオーラが溢れてるんだが……二人はどう思う?」


「ゼルートの言う通りね。持ち手の装飾もかなり凝ってる……貴族や王族が扱う用の武器と言われても信じれるわね」


「そういった物を好む者たちに高値で売れそうだな」


ひとまず鞘から抜き、刃を眺める。


「……うん、ただの観賞用の武器って感じじゃないな」


「でしょうね。これだけのオーラを放っていて、見た目だけは豪華だけど刃はオンボロなんてあり得ないでしょ」


「それもそうか。さてさて、どんな内容なのか……」


対刃剣の名はアルバラス ランクは七

魔力を込めることで風の魔力を纏い、放つことが可能。


持ち手には脚力の大幅上昇。

風の魔力コントロール補助。

魔力を込めることで、刃の切れ味を大幅上昇

そして癒しの風という技を発動でき、効果は自身と仲間の状態異常を回復。


専用技、ストームグロス。

複数の風刃を一瞬にして展開して敵を斬りつける。

刃の性質は自由に変化出来る。


(……まぁ、使いやすそうな魔剣だな)


サラッと対刃剣……アルバラスの内容を読み、扱いやすい高品質な魔剣という認識を持った。


「ゼルート、結果はどうだったの? まさかこの見た目でランク一や二ってことはないわよね」


偶に……本当に極稀にというレベルの話だが、ボス部屋の魔物を倒したとしてもボスの強さに見合わない物が宝箱に入っているという、とんでもない珍事件が起こる。


それはホーリーパレスでも数件ほど確認されているので、六十層のボスを倒したとしてもそんな珍事件が起こる可能性は、決してゼロではない。


「安心しろ、ちゃんと立派な魔剣だよ。ランクは七だから基本的な切れ味は抜群。そして魔力を込めれば風の魔力を自由に操れる。コントロールの補助も付いている」


「コントロールの補助が付いてるのね。それは中々優秀じゃない」


戦闘の際、あまりにも激化すると細かいコントロールが疎かになる場合が多々あるので、地味な効果と思われるかもしれないが熟練者であればあるとこの効果の有難みを知っている。


「後は魔力を込めれば切れ味が大幅に増して、持ち手の脚力も大幅に増す」


「大幅にか……期待出来そうな効果だな」


ランクによって能力の上昇値は大きく変わる。

ランク七の武器ともなれば、その上昇値はルウナの言う通りかなり期待できる。


「後は癒しの風って技が使える」


「癒しの風って状態異常を回復する技じゃない」


癒しの風はアルバラスだけではなく、他の武器にも付与されている場合が多い。

とはいえ、これも能力強化の付与効果と同じく、ランクによって性能に差がある。


「それと、ストームグロスって専用技もあるな。無数の風刃を一瞬で展開できる。風神の性質も自由に変化出来るみたいだぞ」


少々しょうもないと思われるかもしれないが、こういった技は自身の魔力を使って発動するよりも消費魔力が大幅に少ない。


そして、あまり魔力操作が得意ではない人にとって、風刃の性質を自由に変化出来るのは地味に有難い能力なのだ。

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