少年期[677]絡まれない為に取り出す
「……元の場所、か?」
転移トラップ、コロシアムを攻略した後扉のロックが解除され、外に出られた。
そこはゼルートが転移トラップに引っ掛かった場所だった。
「やっぱりロックモンキーとロックコングの死体はないか」
少し前まで戦っていたロックモンキーとロックコングの死体は既にダンジョンに吸収されていた。
だが、コロシアムで戦ったモンスターの素材価値を考えれば、良い収穫を得られたと言える。
「よし、遅れた分はきっちり取り戻さないとな」
身体強化のスキルを使用し、地図を見ながら駆け足で下へ続く階段に向かう。
道中で魔物にすれ違うのいつものことだが、首を跳ね飛ばす。
もしくは魔力感知で魔石の位置を把握し、魔石を貫手で奪う。
それらの方法で戦闘を終わらせ、エボルサーペントが待つ五十階層のボス部屋に向かって走る走る。
遭遇する魔物は全て倒すが、五十階層に降りるまでの速さは尋常ではなかった。
偶に同業者とすれ違うこともあったが、全無視。
すれ違う冒険者も何が自分たちの傍を通り過ぎたのか解らない者もいた。
「ふぅ、ようやく着いたな」
それなりのダッシュで駆け下りたゼルートはたった一日弱でボス部屋の前に辿り着いた。
ただし……そこにはいつも通り、エボルサーペントに挑戦する同業者たちが並んでいた。
(ここにならぶ冒険者はやっぱりどれも強者だな。でも、そんな強者でもエボルサーペントに殺される可能性があるんだよな)
エボルサーペントはBランクの魔物だが、今ボス部屋の中で冒険者たちと戦っているエボルサーペントがBランクかは分からない。
激しい戦いを経験し、エボルサーペントは急激に成長する。
現在ボス部屋の中で戦っているエボルサーペントがAランククラスまで成長している可能性は十分にある。
(さて……俺一人だと向けられる視線の数が多い……加えて下に見る奴が若干多いな)
ボスに挑む前に絡まれるかもしれない。
そう思ったゼルートはアイテムバッグの中から先程倒した真紅の毛を持つミノタウロスの頭部を取り出し、解体を始めた。
「「「「うっ!!??」」」」
いきなり血生臭い匂いがボス部屋前に広がる。
だが、ゼルートはそんな周囲の様子を気にすることなく解体を行う。
高ランクの冒険者であれば、目の前で解体されている魔物がどんな個体なのか直ぐに解る。
Bランクの魔物であるミノタウロス。
斧を使った一撃も強力だが、自慢の角を使ったかち上げも油断ならない威力と貫通力を持つ。
そして毛の色が茶色ではなく真紅。
希少種か亜種か……普通のミノタウロスではなく、ワンランク上の存在だと直ぐに理解する。
「な、なぁ坊主。その魔物はいったいどこで遭遇したんだ?」
ミノタウロスの亜種か希少種である個体とどこで出会ったのか、自身の安全を確保しながら探索したい冒険者にとっては是非知りたい情報。
「……転移トラップのコロシアムだ」
「ッ!!!??? ま、マジ……なのか?」
「あぁ、マジだぞ。サンドワームの攻撃を後ろに跳んで躱したら運悪く跳ばされてな」
転移トラップのコロシアムはトラップの中でも上位に位置するほど冒険者から嫌われている。
超物好きなバーサーカーでなければ跳ばされた瞬間に絶望を感じる。
「そ、そうか。それは確かに運が悪かったな……なぁ、いったい何回戦あるコロシアムだったんだ?」
興味本位で尋ねた。
転移トラップに引っ掛からなければ遭遇しないということは分かったが、いったい目の前の子供がクリアしたコロシアムが何回戦あるものだったのか……ゼルートに声を掛けた男だけではなく、周囲の冒険者全員が気になっていた。
「七回戦目まであった。こいつは六回戦目の魔物だ。ちなみに七回戦目はキングヴェノムサーペントだった。このミノタウロス亜種の次にキングヴェノムサーペントだぞ。この組み合わせ考えたやつ凄い性格悪いと思わないか?」
「そ、そうだな……確かに物凄く悪いと思うぜ」
実際のところ誰が考えたとかは無いのだが、組み合わせが悪いという言葉に多くの冒険者が同意した。
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