少年期[647]あまり期間を長くしないように

「何難しそうな顔をしてるのよ、ゼルート」


「いや……ダンジョンの中なら問題無いと思うけど、街中ならどうだろうと思ってさ」


「……ゼルート、私たちはそこまで弱くはない。だからそこまであなたが心配することも、責任を感じる

必要も無いのよ」


「それはそうかもしれないけどさ」


仲間を守れる力がありながら、守れなかった……そんな未来は絶対に起こしたくない。

その強い思いがゼルートを少々過保護にさせている。


だが、ルウナは自身がまだまだゼルートと比べて実力に大きな差があると感じているので、心配してくれていることに対して反論することはなかった。


その代わり、これなら心配する必要はないと思えそうな案を言葉に出した。


「ゼルートが私たちの身を心配してくれているのは有難い。であれば、宿から出る際には必ずゲイルたち三人のうち、誰かと一緒に行動するようにしたら良いと思うのだが……それならゼルートが心配しなくても大丈夫だと思うのだが」


「良い案ね、ルウナ。それなりに強くなったつもりだけど、ゲイルたちの方がまだまだ強いし。誰かと一緒に行動していれば面倒な輩に絡まれても攫われることはないわね」


万が一を考えたとしても、冒険者の中でトップクラスの実力を持つルウナとアレナ。

そこにモンスター界の中でもトップクラスの実力を持つゲイルたちが組めば、非凡な暗殺者たちでも手を出すことが出来ない。


「ふむ、そういった護衛なら喜んで引き受けましょう!!!」


「私もゲイル様と同じく、そういった護衛であれば喜んで」


「二人とも僕が守るよ!!!!」


三人ともアレナとルウナを大切な仲間だと思っているので、邪な考えを持って近づいて来る者は誰であろうとぶっ飛ばす。


ゲイルたちは思考がかなり主であるゼルートと似てきていた。


「……そうだな。ちょっと心配し過ぎていたよ」


今もしかしたらの可能性について考えるのは止める。

だが、完全に考えるのを止めるのではなく、一旦頭の片隅に置く。


確かにゲイルたちが一緒に行動しているのであれば、危険な目に合う可能性はガクッと下がる。

しかし、ゼルートは万が一……億が一の可能性を考えると、一つのマジックアイテムが欲しいと思い始めた。


(そんなマジックアイテムがあるのか……いや、探せばありそうだなよな。もしくは素材を集めれば造れるか? このダンジョンで探索してれば色々と集まるし、ちょっと頑張ってみるか)


空いた時間で試す内容が決まり、頭をダンジョン探索モードに切り替える。


「そういえばゼルート、最近はフロストグレイブを使ってないみたいだけど、少しは使った方が良いんじゃないの?」


「あぁ……そうだな。あんまり使ってない期間が長くなると、いざ使った時に動きが鈍くなるかもだし……次の相手はフロストグレイブを使うか」


体の使い方は全くもって問題無いが、フロストグレイブの氷を使った連携などは使っていない期間が長くなると、僅かながら鈍くなってしまう。


(この階層に出てくる魔物ならそう簡単に死なないし、フロストグレイブを使った良い運動になるな)


どうせなら早く運動相手が現れて欲しい……なんて思っていると、おあつらえ向きの魔物が現れた。


「ホーリーリビングデットナイト、が……おい、何体いるんだ?」


「三十体以上入るな。それとアークリッチが五、六体。他にタンクやランサーが同じぐらい……そして最後にジェネラル。まさに騎士団っといったところか」


モンスターパーティーに近い状況と言えるだろう。

普通のパーティーであれば、遠距離攻撃が得意なアークリッチだけは倒して脱兎のごとく逃げる。


「良いじゃないか……熱い乱戦が期待できそうだ。ゼルート、フロストグレイブの相手としてジェネラルは譲ろう」


パーティーの中で一番バトルジャンキーなルウナが最上の獲物を譲ったことで、ゲイルやラームもそれに従って他のナイトやランサーに意識を向けた。


「良いのか? それじゃあ、大将の相手は俺がさせてもらおうか」


「皆本当に元気ねぇ~~」


アレナとしてはあまり気が抜けない集団。

なので……いつも以上の戦気と殺気が漏れ始めた。


アークリッチが先に攻撃魔法を放ち、それが開戦の合図となった。

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