少年期[622]何処かの王子も言っていた
「まぁ、そう落ち込むなよ。今このダンジョンに居られる時間は限られてるけど、また余裕のある日に来れば良いだけだろ」
指名依頼を受けた素材を王都まで届け終えたあと、間もなく隣国との戦争が始まる。
戦争とは言っても、侵略戦争ではなく互いの国の有能な場所を狙った戦い。
勿論多くな人たちが死ぬことになるだろう。
権力者であっても、それは例外ではない。
そんな戦争にゼルートたちは参加する。
なので、ホーリーパレスにもう一度長い間潜っていられる時間が取れるまで、それなりに先になってしまう。
「だが……それはかなり先になるのだろう」
「多分な」
「戦争、ねぇ……ゼルート、始まればどうするつもりなの」
今ここでする話ではないかもしれない。
ただ、なんとなく訊いておきたくなった。
「最初に最大火力でぶっ放すのは一応決まってるから……その後は二人組で別れて、それぞれが好きな様に動けば良いんじゃないのか?」
「随分適当ね。でも、悪獣と大量の魔物の群れと戦う時も同じような感じだったし……私たちはそれで大丈夫そうね」
本来なら周囲にもっと仲間がいる状態で戦うべきなのだが、ゼルートはゲイルたちの中から誰か一人とタッグを組み、一気に敵陣に斬り込んで暴れるつもりだ。
「戦争、か……戦場で暴れられるのは嬉しいが、敵にも家族がいると思うと少々苦しい部分はあるな」
バトルジャンキーのルウナからすれば四方八方が敵だらけの戦場は、己の本能を開放出来る最高の場だ。
だが、いつも戦っている状況とは少々違う。
「普通はそう思うわよね……盗賊を殺すのとはまた感覚が違うだろうし」
ゼルートやアレナよりも冒険者歴が長いアレナだが、戦争には参加したことが無い。
「ゼルートはそこら辺、どう思ってるの?」
「どうって……戦場に立つ相手は殺される覚悟が出来てる奴だけだろ。というか、その覚悟が出来てない奴が生き残れる場所じゃない」
規格外中の規格外であるゼルートでも、まだ自分より上の存在がいると考えている。
(俺はまだまだ強くなる……でも、戦争に参加するメンバーの中で俺より強い存在が参加する可能性がゼロとは言えない。いても、負けるつもりは毛頭ないけどな)
そんな相手が現れれば、自分が持てる手札を全て使って粉砕しようと考えている。
必要であれば、慿魔を使う。
なので、遠くないうちに始まる戦争では、悪獣戦の時と違って誰かとベアになって行動しようと考えている。
「てか、向こうだって俺たち殺す気満々で襲い掛かってくるんだ。兵士や騎士になったら戦争に参加するのは必然だろ。解っててそういう職に就いてるんだ。俺はどうこう思わないな」
「……ゼルートらしいわね」
「だろ。まっ、守りたい人を守る為に全力で動くけどな」
ゼルートとしては、父親が治めている領地に所属している兵士たちの安否は大変気になる。
そこまで関りが大きいという訳ではないが、それでも身内に近い存在だと思っている。
(……戦争が始まる前に、一回実家に帰るか)
少々前にマジックアイテムの武器を大量に渡したが、今度は装飾品系のマジックアイテムを渡そうと決めた。
他人からすれば過保護と思われるかもしれないが、兵士たちは皆武器の性能に溺れるような者ではないと解っているので、生き残るために道具には惜しみなく金を使う。
「実際に始まってみないと解らないとは思いますが、ゼルート殿が参加する。それだけで相手側に絶望を与えるのは十分でしょう」
ゲイルの言葉にアレナたちは苦笑いになりながらも、同時に頷いた。
「別に俺だけって訳じゃないだろ……ラームだって戦場だったら魔力の補給に困らないし、十分に絶望を与える筈だぞ」
「じゃんじゃん、ぶっ飛ばしちゃうよ!!!」
ラームの元気な声に場の空気は和らぎ、戦争に関しての会話はそこで終わった。
そしてエボルサーペントの死体と現れた宝箱を一旦アイテムバッグに入れ、一同は地上へと戻った。
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