少年期[618]等価交換だ
エボルサーペントと戦えるまではまだまだ時間が掛かる。
いつも通りアイテムバッグの中から食材を取り出し、簡単な料理を作っていく。
アレナとルウナも手伝い、料理は三十分と掛からずに作り終わった。
「……ゼルート、冒険者を辞めたら、店を開くのもありなんじゃない?」
「飯屋、か……いや、めんどくさそうだから却下だな。どんなに美味い料理を出しても、絶対に面倒なクレーマーが現れるだろうし」
そもそも一日の間、殆ど料理を作り続ける。
そんな退屈な作業は退屈で仕方ない。
(自分が作った飯を「美味い!!」と言いながら食べてくれるお客さんを見るのが嬉しい、そういった思いは解らなくもないけど……俺には合わないな)
飯屋を開くなら、冒険者のOBとして後進の育成を行う。
そっちの方が自分によっぽど合っていると思える。
「ゼルートが作った料理なら、大量の客が集まりそうだな……大繁盛間違い無しだろう」
「大繁盛したら絶対に休めないじゃん。俺は自分が仕事をしたいときにして、休みたい時に休みたいんだ……そんな大繁盛の日々なんて勘弁してくれって感じだ」
「はっはっは!!! それもそうだな。なら、やっぱりゼルートの天職は冒険者だな」
「そういうことだ。ほら、冷める前に食べちまおうぜ」
料理が完成した時点で、前に並んでいるパーティーの一組がボス部屋の中へと入り、残りは六組。
その内の全ての組がゼルート達の方を凝視していた。
この階層まで降りて来る冒険者達なだけあって、飯はそこまで貧層ではない。
それなりの整った料理を作って体力を回復させている。
だが、それでもゼルート達が作る料理の味や匂いには敵わない。
ゼルート達が料理を食べ始めてから五分も経たないうちに一組のパーティーが、ゼルート達の方に向かってきた。
「な、なぁ兄ちゃん。俺達にもその料理をくれないか? もちろんタダとは言わねぇ」
「……何をくれるんだ」
声を掛けてきた冒険者たちは、ダンジョンで美味い飯が食べられる喜びを知っている。
それ相応の物をくれるのだろうと、ゼルートは少し期待していた。
「えっと、そうだなぁ……おい、ちょっと前にあれを手に入れただろ」
「あれって……もしかしてあの短剣のこと?」
「そうだ、それだよ。なぁ、兄ちゃん。金じゃなくて武器でも良いよな」
「あぁ、勿論だ。武器も地上に戻れば金になるからな」
売らずともゼルート自身、短剣はある程度使える。
パーティーの中で一番扱いが得意なルウナに渡すという選択肢もありだ。
「こいつだ。おそらく斬った相手に状態異常を与える二振りの短剣だ」
「…………へぇ~~、面白いな」
二振りの短剣の名は毒功石砕。
ランク六の短剣。
紫色の刃を持つ短剣は相手を斬り、そこから毒を流し込む。
毒の種類は激痛、麻痺、怠惰、麻酔。四種類。
麻酔は痛覚等の痛みを消し、相手が自分の体の状態を無視し続けて動き……無理な動きを続けた結果、自爆する。
ただ、これは強敵を戦う際に仲間に使用し、全力を出し続けるという攻撃法にも使える。
因みに解毒効果もあるので、脅して交渉する際にも使える。
そしてもう片方の灰色の刃を持つ短剣は斬りつけた部分を石化し、次に加える一撃で破壊しやすくする。
こちらも石化を解除する能力を持っているので、有能な短剣といえるだろう。
「高性能な短剣だな。ちょっと待ってろ」
五分の間にある程度食べたゼルートは椅子から立ち上がり、十分ほどでそれなりのご馳走を作り上げた。
肉料理だけではなく、野菜やフルーツも添えられてある。
「こんなもんでどうだ」
「お、おぉ~~~~……う、美味さそうだ。だが、こんなにも大量の料理を貰っても良いのか?」
「等価交換だろ。この双剣はそれだけ良い武器だったんだよ」
「そうか、それなら有難く頂こう」
冒険者たちは満足そうな顔をして自分達の定位置まで戻っていった。
「ルウナ、これはお前が使え」
「良いのか? 料理を作ったのはゼルートだろ」
「そうだけど、別に俺は短剣をメインで使わないからな」
「そうか……なら、遠慮なく使わせて貰おう。毒と、石化がメインの武器なのだろ」
「解除も短剣を使えば出来る」
ゼルートとしてはランク七と言われても信用出来る双剣だった。
その後もゼルートたちに料理を作って欲しいというパーティーが多く現れ、ゼルートは自分達の番になるまで退屈せずに時間を過ごせた。
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