少年期[610]珍しい二つの属性

突然襲ってきたイレギュラーなスケルトンキメラにも即対応し、ゼルート達は少々移動速度を落としながらも順調に探索を行っていく。


「あれだな、骨と抜け殻の鎧がメインなんだな」


「それ以外の魔物もいるが、基本的にはそれらが主に現れる魔物の様だ」


スケルトン、リビングデット系の魔物と何度も遭遇。

罠に関してはルウナとゼルートが全て事前に察知し、躱している。


四十階層以降になれば、罠の脅威度も増す。


落とし穴に落ちる際には多少ではあるが重力が増し、矢の雨には猛毒が塗られ……魔物を引き寄せる匂いが付いた睡眠作用がある霧が噴出される。


だが、二人の鼻と感知を使えば大体は発見出来る。


(いきなり魔物が現れるタイプの罠であれば、魔物を倒した後に宝箱とか手に入りそうだけど……今回は目的が合ってダンジョンに入ってるんだし、そういうのを確認するのは本当に時間が余った時にしよう)


「冒険者としては嫌な組み合わせね」


「なんでだ?」


「……一番高く売れる魔石を回収するのが面倒な相手だからよ。それに、二種類の弱点は光か聖属性の攻撃……二つのどちらかの魔法を習得している者、もしくは効果が付与されている武器は珍しいのよ」


「あぁーー……そういえばそうだったな」


「そうなのよ。ゼルートは光と聖、どちらの魔法も覚えているから寧ろ絶好の狩場かもしれないけどね」


ザ・規格外の魔法使いであるゼルートは光と、聖。二つの属性魔法をある程度までは使える。


なので、遠距離からも余裕でスケルトンやリビングデット達を圧倒出来る。

出来るのだが……それではゼルート的につまらないので、わざわざ武器を持って接近戦で相手をしている。


(本当にこう……考えが他の冒険者、特にダンジョン探索に特化している冒険者とは違うわよね)


ダンジョン探索に特化している冒険者は依頼を達成するために、最小限の時間……そして最小限のスタミナや魔力を消費して戦いを終わらせようとする。


ダンジョンでは何が起こるか解らない……それはダンジョンに潜ったことがある冒険者なら、大半は理解する。

でも……ダンジョン探索に特化している冒険者達は、他の冒険者以上にその怖さを身に染みて解っている。


だからこそ、ここぞという場面で……もしくはイレギュラーが起こった時に絶対に生き残るために常に余力を残しながら探索を進める。


ゼルート達も十分に余力を残しながら探索を進めているが、戦い方は各々が自由に動いている。


(ゼルートは確か付与も使えるから武器に光や聖属性の効果を加えられる……どのクランも大金を払ってでも欲しい人材でしょうね。絶対に引き入れることは無理でしょうけど)


誰かの支配下に置かれることをゼルートは嫌う。


例え普段は自由にして構わないと言われても、必ずどこかで自身の動きを止められる。

自由に生きたい、冒険したいゼルートにとって自身の上に立つ人物、組織は邪魔でしかない。


「絶好の狩場か……というかさ、あいつらの弱点は光と聖だけでも、向こうのメイジやウィザードは普通に色んな属性魔法を使ってくるよな……今更というか当たり前だけど、ちょっとズルく感じない?」


「……人と同じく、魔物も個々によって習得出来る属性魔法が違うから……まぁ、仕方ないでしょう」


「だよなぁ……多くの属性魔法を使える俺と対峙する魔物も同じような気分だろうし、お互いさまってところだな」


「ふふ……確かにそうね」


「ゼルート、前方から纏まった数がやって来たぞ」


ルウナの言葉を聞いて全員が意識を前方に向ける。

纏まっているのは数だけではなく、動きも纏まっていた。


「なるほど……確かに動きも纏まる訳だ」


ゼルート達を敵と認識してやって来た魔物の数は十一。

十体のリビングデットナイト、そしてリビングデットジェネラル。


「……騎士団? って感じだな」


「リビングデットジェネラルが統率のスキルを持ってるんでしょうね」


「あぁ、だからあんなにキッチリ動いていたのか……でも、騎士らしく戦う気はないみたいだな」


ゼルート達の戦闘準備を待つことはなく、リビングデットナイトがジェネラルの命令を受け、一斉に襲い掛かる。


「よし、各々自由に撃退だ」


作戦などありはせず、リビングデット騎士団との戦いが始まった。

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