少年期[608]骨、骨、骨

四十一階層から探索を再開したゼルート達は、いつも通り順調に探索を進めているが、全員が魔物の強さが上がったなと感じていた。


「ふぅ、ある程度本気の一撃をぶつけなければ一発で倒せなくなってきたな」


「そうだな。それだけ魔物達のレベルが上がってきたってことだ」


低ランクの魔物であっても、レベルが高ければCランクの冒険者はDランクの魔物があっさりと殺してしまう、なんて状況もあり得る。


ゼルート達も攻撃する際には刃や拳に魔力を込めてぶちかまし、そこそこ遠慮なしにぶっ潰している。


「にしても……骨の魔物が増えたな」


「スケルトン系の魔物ね……今より若い頃は倒すのが面倒というか、あまり金にならないから嫌だったのよね」


スケルトンの骨は意外と堅い。

魔石を潰せば完全に動きは停止するが、魔石は魔物の素材の中で基本的に一番高い値で買い取られる。


冒険者としてはそれを潰したくない。


だが、物理攻撃でミスって魔石を壊してしまうこともあれば、魔石を奪い取れると思った瞬間……意外とまだスケルトンが動けてダメージを食らってしまう場合もある。


「でも、皆魔石取るの美味いし、結構良い感じに素材は回収できてるよな……というか、スケルトンって結構種類が多いよな」


「魔物や人が骨になった……というだけだから、種類は多いでしょうね」


通常種のスケルトンからスケルトンナイト、スケルトンメイジ、スケルトンタンク。ツーヘッドスケルトン、スケルトンドッグ…………等々、多くのスケルトン上位種が存在する。


「ただ……ちょっとスピードが足りない。骨はそこそこ堅いと思うけど、しっかりと見てれば合わせてカウンターをぶつけられるし」


「私達は全員スピード寄りの身体能力だから、一度穴を空ければ魔石を奪えるから大抵のスケルトンはなんとかなる。でも、一番活躍しているのはラームみたいね」


「えっへん!!!! 凄いでしょ!!!!」


無数の触手で攻撃が出来るラームは短時間でスケルトンの体を少し破壊し、魔石をササっと奪う。

まさに職人技と呼べる手際の良さだ。


「確かに凄いな。ここら辺にいるスケルトン系の魔物ならまだラームの触手でも対応出来るし……しばらくラームの無双状態が続くな」


「じゃんじゃん倒していくよ!!!」


褒められて気分が良くなったラームは遭遇したスケルトンやその上位種の群れに突撃。

そして数分と掛からずに戦闘を終わらせてしまう。


「あれだけいたのに瞬殺だったな」


「ラームの触手は数が多いのに動きが速く、鋭いからな。それに鞭として使っても中々の威力がある。やはり集団戦には強いな」


「だよな……てかさ、スケルトンナイトとか、ウォーリアーが使ってる武器ってある程度まともな得物だよな」


「そうねぇ……レア度は三か四。あまり特殊な効果は付いてなさそうだけど、ルーキーには少々過ぎたしな。中堅どころの冒険者達には丁度良い武器じゃないかしら」


奥の手として特殊能力が付いた武器を持っておいた方が良いが、壊れても構わないがある程度使える武器。

アレナはスケルトンの上位種達が持っている武器を視て、そのような印象を持った。


「そこそこ良い武器を持ってるって訳だ……刃を研いだりすれば普通に売れそうだな」


「再利用も出来るでしょうね。ただ、露店で売るなら商人ギルドを通さないと駄目よ」


「あぁ……そういえばそうだったな。ん~~……面倒だから投擲用として使うか」


特に特殊な効果を付与されていないので、投擲用の武器としては問題無し。

遠慮なく、思いっきりぶん投げることが出来る。


「むっ……ゼルート、少々面白い奴が現れたぞ」


「おぉぉぉーーーー………な、なんじゃありゃ??」


ゼルート達の目の前に現れたのは無数の骨が組み合わさっとキメラの様なスケルトンだった。


「えっと……やっぱりスケルトンキメラ、って名前なのか……いや、キメラとかそういう次元じゃなくないか?」


動物の骨……だけではなく、人の骨までもが組み合わさった無茶苦茶なスケルトンが静かにゼルート達へ近づいてくる。


「よし、ラーム。ここは私達に譲ってくれ」


「自分達もそろそろ本格的に体を動かそうと思う」


「ん~~~……分かった良いよ」


そこそこ暴れて満足したラームはルウナとゲイルに出番を譲って後方へと下がった。

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