少年期[607]報酬によっては
少々波乱が起きた休日を乗り越え、再びゼルート達はダンジョンへと潜り始めた。
四十一階層からスタートすると、階層は石板が敷き詰められている階層へと変化した。
「……洞窟じゃなくて遺跡、に近い感じか?」
実際に遺跡を見たことがないゼルートはその感覚が合っているのか解らないが、今までとは何となく違う……直感的にそう思えた。
「そうね、遺跡タイプの階層で合っていると思うわ。違う雰囲気の遺跡タイプもあるけどね」
「そうなのか? てか、ギルドから買い取った地図を見ればそこら辺は分かるよな。どれどれ……本当だ。四十一階層から五十階層は遺跡タイプ……それに五十階層から六十階層も遺跡タイプみたいだな。でも、作りが違うみたいだ」
「そこまで造りが変わる訳ではないのよ。そうねぇ……神殿みたいな雰囲気に変わる、そんな感じね」
「神殿みたいな……それはそれで面白そうだな。それで、ようやく四十階層までやってきた訳だが……ここからはスピードを落として進むか?」
四十一階層からは遭遇するモンスターは全て並の強さではなくなる。
攻略をメインに進むならば、魔物との遭遇は避けるべきなのだが、その並ではない強さがゼルート達にあう。
「私としてはそれが好ましいな。しかし一回目の攻略は聖魔石と鉱石、そして雷系の魔物の素材が必要なのだろう。それを考えると一日で一階層、もしくは二階層を攻略するペースの方が良いかもしれないな」
ルウナとしては魔物との戦いにしか基本的に興味が無いが、ホーリーパレスまでやって来た目的は聖剣を造る為に必要な素材集め。
なので依頼を受けた冒険者としては正しい対応といえる。
「それぐらいのペースが丁度良いかもな」
簡単そうに言う二人だが、よっぽど熟練のパーティーでなければゼルート達の様に余裕の状態で階層を降りていくことは出来ない。
魔物と遭遇すれば武器や魔力、スタミナに道具を消費する。
あまり消費せずに倒せる魔物もいるが、ここからは倒すのが面倒に感じる強さを持つ個体が増える。
それに対してゼルート達の場合、ゼルートとゲイル、ルウナやラルの肉体派は大してスタミナを消費せずに己の五体で魔物を討伐出来る。
そしてラームも中々桁外れな強さを持っており、体から生み出す無数の触手を動かすことに疲れを感じない。
その触手の貫通力が中々バカにならないという事もあり、相手からすれば非常に厄介な従魔と認識される。
罠の感知に関してもゼルートとルウナが中心となって避けていく。
結果的にゼルート達が危機的状況になることは殆ど無く、いつも通り階層を降りることができる。
「普通は一階層を下るのに二日か三日掛かるのだけどね」
「そうなのか? でも、俺達はだいたいこんな感じで降りてきたじゃん」
「それはそうだけど……まぁ、今更よね」
六十階層をクリアしたという情報が洩れれば、必然的にゼルート達に対しての依頼が発生する。
ゼルート達がこの街にやってきた時期はギルドも把握しており、六十階層をクリアした時間の間を考えれば、圧倒的な速度で攻略したという事実がバレる。
(そうなればダンジョンの中で入手できる素材を欲している人達から依頼がたくさん来ると思うのだけど……ゼルートはどうする気なのかしら)
ギルド依頼は面白そうな依頼が受ける。
それ以外の場合は、ある一定の期間に数回受けるというスタンスで活動している。
なので、ギルドから……もしくは指名依頼を受けたとしても、それらを全てゼルートが受けるとは限らない。
ホーリーパレスで依頼に必要な素材を集めれば、アレナ以外は階層の更新に興味津々なのだ。
(素材集めが一旦終われば、直ぐに達成出来そうな依頼を数個ほど受けて後は期日に間に合う日程まで階層の更新に夢中……移動しなければならない日程になれば、直ぐに街から離れる……そうなれば自然と恨みを買うかしら?)
アレナの考えている通り、素材集めが終われば移動する日まで階層の更新に集中すると決めているゼルート達。
ただ、そんなゼルートも依頼の報酬次第では、指名依頼を受ける可能性はある。
「そんじゃ、攻略再開だ」
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