冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

少年期［５９８］訪問者

「はぁ～～～～、良く寝た」

地上に戻ってきたゼルートはその晩、良く食べて良く寝た。

そしてそろそろ昼が過ぎるという時間になって目を覚ました。

「ゼルート、起きたか？」

声と共にノックが中に響く。

「ルウナか……起きた。起きたぞ～～、超寝た」

「そうだな、超寝てたな。そろそろ昼だぞ」

「みたいだな。着替えたら昼飯食べる。ルウナはどうする？」

「一緒に食べる。アレナもそろそろ腹が減るところだろう」

ゼルートが普段着に着替え終え、ルウナとアレナは合流して一緒に宿の食堂で食べようと降りてきた。

すると……三人の目に一目で凡ではなく、強者だと解かる者が映った。

（……なんかこっちを見てるな。ルウナやアレナじゃなくて……俺に用があるのか？　この街に来てからあんな顔の奴と関わった記憶はないんだけどな）

長い銀髪を後ろで纏めたクールなイケメンがゼルート達の方へとやって来る。

「お前が……ゼルートで合っているか？」

「あぁ、確かに俺がゼルートだ……で、あんたは誰だ？」

「俺はアルゼルガ。クラン名、銀獅子の皇のアタッカーだ」

男の名前とクラン名を聞いたアレナが何かを思い出した。

「どこかで見た顔だと思ったら……ゼルート、銀獅子の皇はこの街では有名なクランよ。そしてこの人はメインパーティーの一人」

「覚えていたのか。何故お前が今ここにいるのか深くは訊かない……ところで、来てもらえるか？」

アレナとアルゼルガが知り合いという事と、アルゼルガが所属している銀獅子の皇というクランがこの街で有名だということは解かった。

しかしゼルートはまだ何故来て欲しいかという理由を聞いていない。

「俺に何の用があるのか……まずは教えて貰おうか」

「マスターからは店に来たら話す……そう伝えろと言われている」

「へぇ～～～、随分と偉そうだな」

実際のところそこそこ偉い。

大手クランのマスターであり、本人はAランクの冒険者。

実力だけではなく、権力も中々のものだ。

「そうだなぁ～……俺達は今から昼飯を食べるところだったんだ。お前のクランのマスターはちゃんと美味い飯を用意してるんだろうな」

「店で一番高い値段のフルコースを用意している」

「へぇーー……言っとくけど、従魔であるゲイル達の分もだぜ。あいつらは結構食べるからなぁ……ちゃんとお前らが全部払えよ」

「……勿論だ」

本当はゼルート達三人だけに料理をご馳走するつもりだったが、まだ自分達が呼びつける要件も話していないのでその内容は飲むしかないと判断した。

「分かった。それならお前のマスターが待つ店まで案内してくれ」

食堂は二人が放つ重苦しい雰囲気から解放され、ルウナとアレナを除いた全員が大きなため息を吐いた。

そしてゼルート達はアルゼルガの後ろに付いて銀獅子の皇のマスターが待つ店へと向かう。

「ゼルート、きっと付いて行っても碌なことが無いわよ。今からでもバックレたら？」

「アレナらしくない言葉だな。確かにどういう話かは解らないが……ちょっと面白そうだとは思わないか？」

「全く思わないわよ！　どう考えたって面倒な流れじゃない」

ゼルートの能天気さにアレナは思わず頭を抱える。

面倒な流れというのにはゼルートも賛同するが、誘われた本人としては面白そうという思いの方が少々上だった。

ルウナもゼルートと同じ様な考えを持っていた。

「そうか？　私も面白そうな展開だと思うがな。流石に向こうも大手のクランであれば馬鹿ではない。乱闘騒ぎを起こそうとは思わないだろう」

「……確かにある程度常識は持っているでしょうけど、逆にゼルートがブチ切れて乱闘になるって展開はないって断言出来る？」

「それは……ちょっと難しいな」

そこそこ大人の対応を覚えてきたゼルートだが、相手が逆鱗に触れてしまったら当然怒りが爆発する。

「お前らなぁ……まっ、その通りだけどな。でも安心しろ、もし乱闘になったらまずは店の外に蹴り飛ばす。そんで空中で戦う。そしたら……いや、街の外まで蹴り飛ばしてから戦うのが一番迷惑を掛けないか」

何てことはない表情で告げるゼルートだが、その考えはあまりにもぶっ飛んでいる。

ただ、それを聞いたアレナとルウナは安心した表情をしていた。