少年期[595]サンドバッグ?

「……まっ、当然の結果だよな」


「そうね。当然の様にフルボッコね」


ラームは触手パンチでメタルゴーレムタンクを圧倒し、魔石を抉り取って勝利。


ラルの戦いは二人が予想していた時間よりも短く、開幕速攻でメタルバードを足でがっちりと掴み、そのまま急降下。

そして地面にぶつかる瞬間にラルは離れ、メタルバードは地面に激突。


体が全身金属とはいえ、その一撃で怯んで一時停止。

その瞬間を狙われ、魔石を脚で抉り取られて終了。


(思ったよりラルは容赦なかったな。バックドロップ? 的な感じの攻撃をぶちかましたけど、あれメタル系のモンスターじゃなかったら一発で首の骨か頭の中身が逝ってるよな)


続いてゲイルとメタルゴーレムナイトの戦いも意外とあっさりと終了した。

メタルゴーレムナイトはそこそこ速く、そして体が堅い。


ただ、速さはゲイルにとって混乱するような速度ではなく、鋼鉄のボディも長剣の刃に風の魔力を纏えばあっさりと斬れてしまう。

魔力を消費すれば斬られた部分から先は再生するが、結局は魔力切れになるまで斬り刻まれて最後は魔石を斬り取られた。


(Cランクの魔物で長剣を使う個体だったが、ゲイルには全くもって効果がない長所だったみたいだな)


ゲイルからすれば斬っても限界まで再生を続ける少々面倒な魔物でしかなかった。


最後にメタルゴーレムファイターと戦ったルウナだが、スピードでは完全にルウナが勝っていた。

全ての攻撃を避け、有効打を与え続けて勝つというプランもあったが却下。


攻撃一つ一つ正確に裁き、ノーダメージで受け流すことに集中。

相手の攻撃が重ければ重いほど受け流すのが難しくなある。


その技術を上げるにはうってつけの練習相手。

メタルゴーレムファイターは一分ほどルウナの練習に付き合う形となり、他の三体と同様に魔石を抉り取られて終了。


実に呆気なくボス戦は終わってしまった。


「丁度良い練習相手だったな」


「サンドバッグ? って感じだった!!」


「良い戦いをするには少々スピードが足りませんでした」


「何と言いますか……良い戦いをするような相手ではなかった、といった感じかと」


結果、四人共満足する戦いにはならなかった。

不満そうな表情はしていないルウナだが、楽しかったとは思っていない。


ゲイルと同じくスピードがいまひとつ足りないと感じていた。


「まっ、Cランクのモンスターが四体だもんな。四人で相手にすればそりゃ直ぐ終わっちまうか」


「……実力なら三十階層のリビングデットナイトと上位種のリザードの組み合わせの方が上ね」


「ソウルコネクトまで使っていたからな……やっぱり俺達運が良かったな」


「運が良かったという意見は否定させてもらうけど、鈍った体を目覚めさせるには丁度良い相手だったわ」


今回戦ったルウナ達もソウルコネクトを使ったリビングデットナイトと上位種のリザードコンビであれば、今回のボス戦よりも時間が掛かった。


「でも、この下の階層からは楽しめる相手が増えるのだろう。楽しみだ」


「ルウナ殿言う通りですな。レベルが上がり、Cランクの魔物が多くなる。そしてBランクの魔物も偶に現れるようになる」


戦闘好きな二人は四十階層以降の冒険が楽しみで仕方がない。

それはラームやラルも同じく、表情はいつも通りだが内心ではワクワクしている。


ゼルートは当然ワクワクしており、唯一アレナだけは全く心が躍らない状態だった。


(普通ならこれから気合を入れ、緊張感を張り詰めていかない駄目な領域なのに……駄目ね、本当に私の中の常識が崩れてきている)


もはや四十階層から下に降りることに対し、アレナは恐怖を感じていない。

だが、それは普通の冒険者からすれば異常だという事は理解出来ていた。


「喜んでいるところあれだが、四十階層のボスを倒したんだから一旦地上に戻るんだぞ」


「……そういえばそうだったな……うん、休息はキッチリと取らなければならないな」


このまま四十一階層に突入したい気持ちで一杯のルウナだが、感情を爆発させることなく思い留まった。

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