少年期[584]攻略法……かもしれない

「こういった肉弾戦は、やはり良いものだな」


ゼルートやルウナと同じくゲイルも笑いながらオーガ達と戦っている。


身長や体格だけならばオーガの方が圧倒的に大きいのだが、まるで力比べをするように相手の攻撃に合わせて迎撃している。


「グオオオッ!!!!」


「フンッ!!!!」


巨大な炎を纏った拳に対し、風の魔力を纏った正拳で反撃。

その結果は意外にも互角という結果になったが、レッドオーガの骨には大きな罅が入った。


「ふむ、少々やるな」


普通に戦っては勝てないと解り、自身の魔力の大半を次ぎ込んで放ったパンチは二体の力量差を一瞬ではあるが無にした。


「ハッ!!」


しかし骨に罅が入った瞬間の隙を突かれ。へそ辺りに大きな穴を空けられてしまう。

その間にゲイルに無数の攻撃が飛んで来るが、冷静に躱すか相殺していく。


「……」


そこで一対のオーガが倒されてしまったレッドオーガの攻撃を参考にし、己の脚に全魔力を纏ってその場から大きく跳んだ。


「むっ!! ふふ、良いだろう」


既に身体強化も使用しており、脚に魔力が纏われ盛大に強化された踵落し。

強烈な蹴り技に対してゲイルは両腕に魔力を纏い、クロスして踵落しをガードする。


オーガの蹴りとゲイルの腕が接触した瞬間、ゲイルの足元に大きな亀裂が入る。


(ほぅ……中々頭を使うようだな)


強力な蹴りを叩きつけられたゲイルがこの一瞬は動けないだろうと判断したブルーオーガは同じく脚に水の魔力を纏い、体を屈めて横蹴りを放った。


「良い判断だ」


そう言いながらゲイルはクロスしていた片方の腕を使って水脚を受け止めた。

これで少しはダメージを与えられるだろうと思っていた二体は流石に表情が崩れてしまう。


二体の脚を掴んだゲイルはそのまま二体を振り回して地面に叩きつけた。

丁度頭部が地面にぶつかる瞬間に叩きつけたので二体の頭部は潰れ、行動不能となった。


「ふっふっふ、同族が倒されたのにも拘らず消えないその闘争心……本当にダンジョンは心地が良い場所だな!!!」


見る者によっては恐怖を与えるゲイルの笑みを見てもオーガたちの表情は崩れない。

ただただ目の前のリザードマンを殺す。


攻略法になるかもしれない方法、体の一部に殆どの魔力を纏って放つ一撃。

それをぶつける為に他のメンバーと戦っているオーガたちも真似し始めた。


全身全霊を込めた一撃がゲイルを次々に襲ってくる。

しかしゲイルの危機とした表情が消えることは無い。


「ゲイルは本当に楽しそうに戦いますね」


「ラルは楽しくないの?」


人間態で戦うラルと魔物の姿で戦うラーム。

ラルはゲイルやゼルートと同じく体術だけで戦っているが、ラームは触手でオーガを翻弄しつつ水弾で止めを刺している。


「いいえ、勿論楽しいわよ。でも、ゼルート様達みたいに笑顔で戦いはしないなと思ったのよ」


「オーガやレッドオーガとかじゃ満足出来無いってこと?」


「……そうね。これぐらいの相手じゃ少し食い足りないわね」


ドラゴンとしての本能が少し表に出てしまう。

近くに子供でもいたら得体の知らない恐怖で泣き出してしまうこと間違いなし。


(ゼルートやゲイルとかも戦ってる時少し怖くなるけど、ラルもラルでも本能が表に出たら怖いよね)


魔物という種族の中でトップクラスに立つのがドラゴン。

そんなドラゴンの闘争本能が表に出れば、例えエリート冒険者であっても緊張感で顔が強張ってしまう。


「あらよっと」


「ッ、グゴ!?」


最弱の魔物と呼ばれているスライムであってもオーガ達は魔力を纏った拳や脚を容赦なく叩きつけようとする。

だが、そんな強襲を嘲笑うかのようにラームは触手を脚や腕に巻きつけて強引に引っ張り、転倒させる。


そして大きな隙が生まれた瞬間に心臓や頭部に水弾を撃ちこんで制圧。

アレナと同じように無駄なくオーガを仕留めていった。


六人共それぞれが好きな様に戦い、結果としてオーガやその他四種のオーガは三分ほどで全滅した。


「いやぁ~~、本当に良い運動だったな」


普通なら絶望すべき状況も、六人にとっては効果のあるエクササイズでしかなかった。

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